なぁ、“せかい”ってことば、知ってるか
江戸末期、東京の片隅。おきくや長屋の住人たちは、貧しいながらも生き生きと日々の暮らしを営む。そんな彼らの糞尿を売り買いする中次と矢亮もくさい汚いと罵られながら、いつか読み書きを覚えて世の中を変えてみたいと、希望を捨てていない。
武家育ちでありながら、今は貧乏長屋で父と二人暮らしをしているおきくは、寺子屋で子どもたちに文字を教えている。毎朝、便所の肥やしを汲んで狭い路地を駆ける中次のことがずっと気になっている。
ある日のこと、おきくの父、源兵衛は「なぁ、“せかい”ってことば、知ってるか?」と中次に「せかい」の言葉と使い方を教える。
ある事件に巻き込まれ、喉を切られて声を失ったおきく。引きこもりになってしまったおきくは、「文字を教えてほしい」と訴える子どもたちと住職に説得され、もう一度、子どもたちに文字を教える決意をする。
雪の降りそうな寒い朝。やっとの思いで中次の家にたどり着いたおきくは、身振り手振りで、精一杯に気持ちを伝えるのだった。
お金もモノもないけれど、人と繋がることをおそれずに、前を向いて生きていく。そう、この「せかい」には果てなどないのだ。
人も自然も、生きる上で私たちの「肥料」になる
「どついたるねん」(1989年)で監督デビュー。「KT」(2002年)、「亡国のイージス」(2005年)、「闇の子供たち」(2008年)、「エルネスト」(2017年)など、社会に問いかける映画も多数送り出してきた阪本順治監督の最新作です。
資源が限られていたからこそ、使えるものはなんでも使い切ろうとする文化が浸透していた江戸時代。私たちが生活するうえで必ず出てくる「糞尿」を買い取り、農家に売る「下肥買い」も立派な商売として成り立っています。しかし、扱う商品が商品のため、多くの人たちに「下の身分」として見られる矢亮と中次。それでも自分の仕事に誇りをもって働いています。日本が大きく揺れ動いている江戸時代末期ですが、庶民の暮らしはそれどころではなく、毎日の暮らしに精いっぱいです。
社会が大きく動いていても、それどころではなく懸命に生きる人々の姿はなんだか今の私たちに似ています。つらく厳しい現実にくじけそうになりながら、それでも心を通わせることを諦めない若者たちの姿が、孤立化している今の私たちに問いかけてきます。
田畑の肥料となり、野菜となって私たちの口に入り、そして糞尿となり、また、田畑の肥料へと戻っていく、そんな「糞尿」が重要な役割を果たすこの映画。今話題の「SDGs」を地で行っている映画だとは思いますが、なんとなく、上映時間中「臭ってきそう」な映画です。飲食をしながらの鑑賞は気をつけた方がいいかも?!
映画『せかいのおきく』 一般試写会 ご招待プレゼント
■開催 4月11日(火) 開場19:15 開演19:30 (上映時間90分)
■会場 シネ・リーブル池袋 (東京都豊島区西池袋 1-11-1 ルミネ池袋 8F)https://ttcg.jp/cinelibre_ikebukuro/access/
■ご招待プレゼント 10組20名様 ※映画『せかいのおきく』4/11(火)一般試写会 応募フォーム: https://onl.bz/KXnzRm1
※応募締め切り:3月31日(金)まで
※当選発表:4月3日(月)を予定しております メールアドレス:magichour magichour.co.jp から当選した方へご案内mailをお送りします
※お問い合わせ先:マジックアワー ℡:03-5784-3120/magichour@magichour.co.jp
映画『せかいのおきく』
出演:黒木華、寛一郎、池松壮亮、眞木蔵人、佐藤浩市、石橋蓮司 脚本・監督:阪本順治 配給:東京テアトル/U-NEXT/リトルモア 4月28日GW全国公開
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( 月刊全労連2023年4月号掲載 )
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