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#最低賃金を1500円に 引き上げたら、中小企業が潰れてしまう? 全労連はそうさせないための「中小企業支援政策」を提言します。長いですが、この機会にご一読ください。#物価にあわせた最低賃金を #参院選2022

全国一律 最低賃金実現に向けた全労連が考える「中小企業支援政策」

全労連事務局次長 秋山 正臣

 

はじめに

 全労連は、全国一律最低賃金の実現をめざした「最賃アクションプラン」を第28回大会で決定し、全国一律最低賃金1500円の実現をめざし、とりくみを進めてきた。
 全労連が行ってきた最低生計費試算調査では、全国どの地域でも生計費が変わらないことが明らかになった表1)。

     


 2021年の最低賃金改定では、地域間格差の是正を図るため、中央最低賃金審議会は28円の一律引き上げ額を答申した。


 しかし依然として、最高額と最低額の格差は221円のままとなっており、是正への道のりはまだまだといわざるを得ない。


 全国一律最低賃金の実現には、中小企業支援政策の充実が必要であり、意見交換しながら提言をとりまとめた。
 提言は、①中小企業への直接支援、②公正な取引の実現、③有効需要の創出という三つの柱で構成される。本稿では、その内容を報告する。


1 最低賃金引き上げの重要性

 「はじめに」でも述べたとおり、地域間格差是正には、多くの壁が立ちはだかっている。とりわけ、低い水準の県において、急激な引き上げが中小零細企業の経営を圧迫しているとの声が強く、経営者団体との懇談においても、中小企業支援策が欠かせない課題・話題となる。


 日本経済の鍵を握る中小企業(表2・3)を活性化させるには、個人消費を拡大させなければならない。そのためには、全国一律最低賃金制を確立させて多数の労働者の賃金を引き上げ、地域経済の好循環を図ることが必要だと考える。

 

 



 同時に考えなければならないのは、地域間格差の是正だ。地域間格差の拡大は、表4のとおり拡大してきた。2002年は104円であった地域間格差が、現在では221円と2倍を超えている。

 

※2002年の差額108円は104円に訂正致します。

 全労連は、最低生計費の調査結果から、最低賃金について全国一律1500円の実現を求めているが、いちばん低い県、高知県沖縄県は680円もの引き上げを行わなければならないこととなる。地場産業や零細企業にとって余りにも急激な負担増であり、実現は容易ではない。


 だからこそ、国による支援で引き上げを行いつつ、収益の流出を抑え、地域循環型経済を実現することが求められる。この地域循環型経済は、エネルギーをはじめ食料などについても域内での調達と消費を行うこととなり、気候危機打開に向けたとりくみとも軌を一にする。


2 中小企業への直接支援

 前述したとおり、中小企業支援策の第一は国による直接支援である。直接支援といっても助成金を支給するといったものから、税・社会保険料などの負担軽減によって支援する方法が考えられる。


 これはどちらか一方だけを行えばよいというものではなく、相乗的に行うことが必要と考える。施策の中には「卵が先か、鶏が先か」といったものもあるが、労働者の生活と、中小企業経営者の生活と営業のどちらも壊すことがあってはならない。こうした観点から、施策を提言している。


(1)最低賃金引き上げに伴う助成金支給
① 法定の最低賃金が引き上げられたことにより、賃金の改善を行わなければならなくなった事業所に対し、経営状態などを勘案して、事業規模に応じた助成を行うものに改正するよう求める。


② 必要な財源を試算する。加重平均で最低賃金は930円のため、最低賃金を1500円に引き上げるため、1時間あたりの助成額は300円程度必要と考える。そのため、月150時間労働で1人あたり年額は54万円となる。


③ 対象労働者数については、厚生労働省中央最低賃金審議会に提出している「賃金分布に関する資料」(都道府県別・総合指数順)で、東京都でも1500円未満の労働者が150万人近く存在し、鳥取県でも10万人程度存在することが確認できる。ただし、当該労働者には、大企業で働く労働者も多数存在していることが考えられる。


④ 助成金の支給については、地域経済の好循環につなげるため、必要な資金を事前に提供し、賃金引き上げからスタートさせることが必要だと考える。


⑤ 中小企業に対し、賃金引き上げのための助成金最低賃金改定時に国から前渡して支給する制度を創設し、1人あたり年額54万円を支給する。


(2)社会保険料の負担軽減で雇用をまもる
 最低賃金の引き上げは、対象となる労働者の大部分が中小零細企業で働く労働者であることから、経営に多大な影響を与える。そのため、賃金支払いが困難との判断が強くなれば、雇用労働者を正規雇用からパート雇用へ切り替えることにつながる危険性が生じる。


 これでは、労働者の収入拡大にはつながらず、地域経済にもメリットはうまれない。賃金を底上げし、正規雇用労働者を拡大させていく方向につながるようにしなければならない。

 以下、社会保険料の種別ごとに負担軽減策について説明する。

 

① 健康保険料
 全国健康保険協会の事業年報「協会管掌健康保険の適用状況(第一表)」(表5)によれば、2019年3月現在で適用事業所数が232万4510、被保険者総数が2479万3285人、標準報酬額の平均は29万2462円となっている。このため、事業所負担分は年額で約19万円となる。したがって、協会管掌健康保険適用事業所の事業所負担分全額を負担するとした場合の財源は、4兆4300億円余りとなる。

 

 

② 年金保険料
 厚生年金保険料は、保険料率の引上げが終了し、2018年10月から18.3%となっている。
 厚生労働省「厚生年金保険業態別規模別適用状況調」(2019年9月1日現在)(表6)によれば、規模299人以下の被保険者数は2137万5295人となっている。規模別の標準報酬月額の平均では、5~9人の標準報酬月額の平均が30万7604円と一番高いため、当該額を基礎に試算すると、年額で事業所負担額は34万3000円余りとなるため、全額で7兆7400億円程度となる。

 

③ 介護保険
 2021年度の介護保険料率は、1.92%とされている。全国健康保険協会の事業年報「協会管掌健康保険第一表(続)法第3条第2項被保険者」によれば、被保険者数は1317万9000人となっており、標準報酬月額の平均は31万7069円となっている。したがって、事業主負担分は年額で3万7097円となるため、全額を負担する場合の財源は4900億円弱となる。

 

④ 労災保険料
 労災保険の趣旨は、勤務中の災害を補償することであり、保険料の減免で事業主責任が軽減されるわけではない。賃金が引き上げられることにより、保険料収入が増えれば収支が改善され、全体的な保険料率引き下げが可能となる。また、保険料率の計算で労災事故によるメリット制が導入されていることもあり、保険料を国が負担することによる軽減措置をとることは、技術的・事務的にも困難と考える。

 

⑤ 雇用保険
 雇用保険料は、失業給付・雇用継続給付及び雇用安定事業などのための保険料であり、賃金の引き上げによって保険料収入が増大し、収支が改善されて保険料の引き下げが可能となる。
 保険料を国が負担する軽減措置をとることは技術的・事務的にも困難であることから、失業者に対する給付改善、助成金の拡充のため、国庫負担を拡大することを求める。
 ただし、雇用安定事業として徴収される事業主負担分については、雇用調整助成金などの事業所を対象とする給付金であるため、中小企業に対する保険料は免除対象とする。

 

⑥ 負担軽減案とそれに伴う財源について
 以上の通り、社会保険料に関する中小企業の負担軽減は、事業主負担分からどの程度軽減するかによる。試算した社会保険額の総額は13兆円となっており、全額免除とするには財政負担が余りにも大きいといわざるを得ない。単年度の負担軽減では済まされない課題でもあり、政治的な決断・判断が必要となる。


 これらをふまえ、恒常的に負担軽減を図る必要があるとの立場から、社会保険料の一律3割減免とし、4兆円弱の予算確保を提言する。


 社会保険制度は、保険料収入と国庫負担で保険制度の目的である給付を行うのであり、単純に考えれば国庫負担を一律に増やせばいい。


 しかし、財政全体を考えたとき、国庫負担を増やすことは収入となる税金の徴収を増やすことにつながるものであり、つまるところ中小企業経営者も労働者も負担が増えることとなる。


 社会保険料の減免などに必要な財源は、大企業に対する法人税減税の見直し、所得税最高税率見直し等によって賄うことが必要と考える。加えて、増額し続けている防衛費を削減し、中小企業支援の予算に回すべきと考える。なお、時限的に内部留保課税も検討を始める必要がある。


(3)税制改革による中小企業の負担軽減策

① 消費税法の見直し
 消費税の引き上げにより、価格転嫁のできない中小零細企業は次々と廃業した。また、導入が進められようとしている適格請求書(インボイス)制度も負担が大きい。
 原油価格の上昇をはじめ円安による物価上昇も続いていることから、消費税の引き下げとともにインボイス制度の導入見送りを求める。

 

② 所得拡大促進税制
 賃上げを実施する企業に対する税制上の優遇措置として、「中小企業向け所得拡大促進税制」がある。これは、継続雇用者給与等支給額が前年度比より1.5%以上増加した場合、増加額の15%を税額控除できる。前年度比で2.5%以上増加させた場合は、25%を税額控除できる。ただし、法人税額の20%が上限となっているため、賃金引き上げの効果を高めるためにも、増加額の50%を法人税額から控除するよう求める。

 

③ 事業承継税制の継続もしくは恒久化
 事業承継については、中小企業庁による相談対応、「事業引継支援センター」の設置、「事業承継補助金」、「税制措置(非上場株式等にかかる相続税免除、事業用資産の承継にかかる相続税贈与税の納税猶予・免除など)」、「経営承継円滑化法による総合的支援」などが行われている。


 相続税贈与税の納税猶予・免除措置は2028年12月31日までとなっているため、期間延長もしくは恒久措置とすることを求める。また、総合的支援窓口の拡充を求める。

 

3 公正取引の実現

(1)低価格入札の防止
 印刷業界では、重層下請構造で最下層にあたる製本業者にしわ寄せがなされ、最盛期から70%もの事業者が減少し、業界の存続さえ危ぶまれている。口頭契約、後指値、支払いの先延ばし、過剰なクレームによる返品や、やり直しなどがまかり通り、公正取引委員会にも訴えることができないなど、深刻な実態にある。低価格入札の防止が必要であり、下請代金支払遅延防止法の履行確保を図ることなどにより、防止措置を実効性のあるものとしていくことが必要だ。


 実効性を高めるためには、罰金額の大幅な引き上げなど実効性の確保が欠かせない。また、厚労省中小企業庁における通報制度が十分に活用されていない。
 経営者が「買いたたき」など不当なしわ寄せを受けていると考えられる場合は、労働組合から積極的に告発する。

 

(2)フリーランサーやプラットフォームへの規制について
 公正取引を実現させる観点では、増大するフリーランサーやプラットフォーム事業者に対する規制を検討する必要がある。


 労働法の原則は、実態に応じ判断することとされており、指揮命令など従属性が強ければ労働者となる。しかし、従属性が弱いとなっても、取引に関して対等とはいえないことから、事業者であっても何らかの保護を行うことが求められる。


 したがって、労働者としての判断がされない場合であっても、労働者に対する賃金支払いなどで保護される水準に必要な経費相当分を加味した額が保障されなければ、下請法に反するとして、反則金の徴収など罰則を加えることを求める。


 プラットフォームについては、発注者と仲介者が存在する。発注者が国外の場合もあり、使用者責任を問うことが困難なケースもある。また、仲介者であっても国内に存在するとは限らない。国境を簡単に越えるシステムであることから、国内法で規制することには限界がある。したがって、国際的な取り決めを行うよう政府に求めるとともに、国内法による規制法の創設を求める。

 

(3)「下請代金支払遅延等防止法」の履行確保と法改正
 下請代金支払遅延防止法第2条の2にもとづき定められている指針では、「下請代金の減額」(表7)、「返品」、「買いたたき」などが禁止されている。このため、公正取引委員会では中小企業者専用相談窓口を開設し、情報の提供を呼びかけている。
 法の履行を確保するため、公正取引委員会の拡充を求める。
 急速なデジタル化の中、このような形態で働く個人が増加しており、支払いに関する紛争も増加している。弱い立場にある個人請負労働者を保護するため、対象範囲を見直し、法改正を行うよう求める。

表7




4 有効需要の創出

 (1) 地域における有効需要の創設では、公共投資が中心として考えられてきたが、建設業に従事する労働者数は減少を続ける一方、医療・福祉・介護分野に従事する労働者が増加している。これらの分野で働く労働者の賃金は、公務員労働者の賃金を参考にしつつも、診療報酬や介護報酬など保険制度による制約を受けている。
 これらの点から、社会保険の診療報酬・介護報酬などの改定を国に迫ることも重要となっている。保育の分野でも同様であり、運営費の増額がなければ保育士の賃金改善は進まない。劣悪な労働条件が保育士不足の原因でもあり、運営費の増額で賃金引き上げを求める。

 

 (2)中小企業振興条例の制定が進展(理念条例を含む)しているが、中小企業振興、地域経済の活性化の施策を具体化する「円卓会議」を設置するなど、実効性の担保が課題となっている。そのため、自治体による中小企業への発注等を義務づける等の対策が求められるが、引き続き、すべての自治体で中小企業振興条例が制定されるよう求める。
 

 (3)社会生活にとって欠かせないインフラを整備することは、持続可能な社会を構築する上で欠かせないことであり、長期にわたる計画的な工事を行うことが求められる。計画的なインフラ整備は、技術者の育成と「地消地産」にもつながる。
 こうしたインフラなどの整備は、気象条件をはじめ、地域に応じた計画と対策が求められるため、国による支援を元に、地方自治体が主体となって住民とともに計画を作成し、実行することが求められる。この際、予算単年度主義による工事発注などではなく、耐用年数や減価償却なども考慮した限界工事量を設定し、長期にわたる計画的な発注を行うことが求められる。


 (4)官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律を実践するため、発注単価の計算に最低制限価格を必ず導入する。その積算においては、従事する労働者の労働時間を勘案するものとし、国において発注単価を示すこととする。
 なお、国・自治体などが発注する場合における入札参加資格において、中小企業が参加できる範囲を拡大するため、分割発注を増加させるとともに、設定金額の引き下げを求める。


 (5)国などが行う契約、調達、役務などでは、従事する労働者の賃金についての考慮はなされておらず、入札が繰り返されることにより、当該事業に従事する労働者の賃金が低水準、最低賃金水準に据え置かれ、官製ワーキングプアの温床となっているとの批判がなされている。依然として国及び多くの自治体においては、財政事情を理由とした低価格での落札が相次いでおり、労働者の賃金が低水準に据え置かれるなど、問題は山積している。
 2016年に公共サービス基本法が制定されているが、実質的に機能していないことから、従事する労働者の賃金を重視した「公契約法」及び「公契約条例」の制定及び、労働報酬下限額の設定が求められる。


 (6)「小規模企業振興基本法」において、下請企業振興法が定める「振興基準」を条文に付加し、下請け事業者に不利益な契約に対するコスト負担などを定める。
 小規模企業以外の下請け企業に対する振興基準に反するような取引に対し、中小企業庁による監視体制の強化、親企業に対する指導など行政処分を強化する。


 (7)事業協同組合等が労働環境の「改善計画」を策定し、認可を受けることによって助成措置を受けることができることとされている。これら助成金については、申請が複雑であることなどから、簡素化や要件の緩和などを求める。
 加えて、「独占禁止法」第22条の活用を図るには、「中小企業等協同組合法」に基づく届け出などを必要としているため、手続きの簡素化など要件緩和を求める。


 (8)最低賃金の引き上げは、中小零細企業の経営に多大な影響を与えることから、密接な関係にある地域金融機関を強化・重視すべきであり、金融政策においても政策の方向転換が求められる。


おわりに

 以上提言の内容を紹介してきたが、新型コロナウイルスによる感染防止対策の必要性などにより、中小企業の経営が脅かされ続けている。ロシア政府によるウクライナ侵略から、国際情勢は戦渦が広がる危険な状態にある。


 日本が戦争に巻き込まれるようなことがあってはならず、平和を維持するための外交努力がいまほど求められているときはない。


 一方で、人びとの営みをまもるため、政府が役割を発揮することが求められる。諸物価の高騰によって実質賃金の低下に苦しむ労働者が増加することが懸念される。
 最低賃金の引き上げは、「持続可能な地域社会の実現」につながるものであると考える。


 本提言を契機として、政府の中小企業対策が強化され、「全国どこでも1500円の最低賃金」が早急に実現し、国民の誰もが、環境に優しく豊かでゆとりある生活を送ることができるように願ってやまない。

 

( 月刊全労連2022年7月号掲載 )

 

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Twitterデモだけじゃない! 経営者との交渉を有利に進めるためのSNS活用術 #労働組合ができること ユニオンちよだ書記長 鈴木 明彦

 ユニオンちよだは、2014年にホームページ(以下HP)を立ち上げ、若いひとたちにも馴染みやすいように、デザイナーに依頼してゾウ・ライオン・フクロウをイメージキャラクターに起用した。 

 

HP: ユニオンちよだ (unionchiyoda.org)


 スマートフォンが普及するにつれて、ますますネットで労働組合を探す労働者が多くなり、HP経由での労働相談や加入者が約7割に達してきている相談に来られた方にユニオンちよだを選んだ理由を尋ねると、「HPのデザインが良かった」、「活動内容や解決実績が掲載されていて信頼できる」という声が多かった。


 2020年になると新型コロナ問題が起きたことで、環境的に社前での抗議行動が難しくなってきたため、本格的にTwitterFacebookを活用して情報発信するようになった。この頃からSNSには、要求書や会社側の回答書、訴状や救済申立書、ビラや抗議行動の画像もアップし始めた。

会社の実名を入れて不当な行為を社会に拡散することで、会社を追い詰め解決へと繋げている。


 例えば、某外資系食材販売会社で従業員が解雇された問題では、ユニオンちよだと当該組合員とでTwitterFacebookで会社の問題行為や経緯を発信し続けた。社前抗議行動の画像もアップした。その結果、労働審判ではユニオンちよだも利害関係者となり、SNSの投稿を削除することで満額回答の和解が成立した


 会社とユニオンちよだで協定書を締結するケースもあった。某会計事務所における解雇問題では、不誠実な団体交渉が続いたためSNSで情報を発信した。その後、労働審判で解雇問題は和解が成立したが、会社は組合との協定は拒否した。しかし数日後、一転して会社からSNS投稿の削除依頼とユニオンとの協定書を求めてきた。どうやら会社の関係者がSNSを見たらしい。


 ときには、ユニオンちよだのSNSに対し抗議する会社もあった。某IT会社における解雇問題では、団体交渉の場で「ユニオンのSNSは名誉棄損だ、訴える」などと脅してきた。関係者(従業員や同業社)からのリツイートなどの反響が大きかったからである。しかし、ユニオンちよだは、事実と判断した事しか発信しておらず正当な組合活動の範囲内であると反論し、削除することなく発信し続けた。この件もSNS投稿の削除を条件に和解が成立した。


 会社がSNS投稿の削除を求めてくるメールには、「現在、弊社名がHP/Facebookに存在します。以下部分を含めて、弊社名の記載がある箇所の会社名削除等のご対応をお願いいたします」、「1点お願いがあり、ご連絡させていただきました。貴組合の〇月〇日付の下記ツイートですが、合意書の取り交わし後で構いませんので、削除いただけませんでしょうか」などと書かれている。


 また、ユニオンちよだは、某外資系治験会社に分会をつくり公然化している。この分会では、ブログによりパワハラやPIP(業務改善計画)など会社の問題行為を公開している。このブログにより労働相談や分会への加入につながっている。


 ところで、2020年に検察官定年延長法案を見送らせたのはSNSの威力であった。やはりコロナ禍であるからこそのTwitterデモであった。同様に会社の不当な行為も、SNSで運動を広げることにより会社を追い詰めること、すなわち早期解決につながると確信している。

 

全労連無料労働相談ホットライン:全労連|労働相談ホットライン【フリーダイヤルはおかけになった地域の労働相談センターにつながります。】 (zenroren.gr.jp)を開設しています(メールも可)。職場で働くことで困ったことがある方は、お気軽にお電話ください。自動的に最寄りの相談所に繋がります。電話:0120-378-060 (平日10時~17時)

ついにアマゾンで労働組合結成!相次ぐアメリカでの労組結成の動きについての解説 全労連事務局次長 布施 恵輔

 4月1日、米ニューヨーク市のスタテン島にあるアマゾンの配送センターで交渉権のある労働組合が結成されました。米国のアマゾンで初めての労働組合結成です。今回の労働組合認証選挙の結果は、米国の労働組合運動の歴史的転換点となるのではないかと言われています。


 米国では各地でスターバックスでの組織化が相次いでおり大学院生講師の労働組合結成も続いています。このような組織化の背景に何があるのか、アマゾンのケースを見ながら考えます。


全米初、アマゾンでの労組結成


 4月1日の認証選挙は、ニューヨーク市南部のスタテン島にあるJFK8と呼ばれる配送センターで行われました。アマゾンは物流拠点、配送を行う拠点をFulfilment Centerと呼び、全米各地に存在しています。およそ1年前、21年4月に南部のアラバマ州ベッセマーでの組合認証選挙では組合結成は否決されていました。アマゾンの徹底的な労働組合攻撃が主な原因です。


 米国では協約交渉が可能な労働組合は、使用者がそれを認めるか、全国労使関係委員会(NLRB)の管理のもとで行われる認証選挙で過半数の賛成票を獲得する必要があります。労働組合自体は少数でも活動はできますが、認証選挙を経て交渉権を獲得することで、交渉単位全員を代表して使用者側と排他的交渉権を獲得することができ、職場で大きな力を持つことができます。しかし、アマゾンやスターバックスのような大企業ほど、労働組合潰しを弁護士やコンサルタントを雇って行ってきます。そしてNLRBの規則や投票の運用も、使用者に有利なものが多く、概して労働組合にとって不利です。


 今回のアマゾンの労働組合結成は、組合妨害を徹底的に行なっている大企業での結成となり、全米の労働者を励ましています。


妨害を跳ね返しての勝利


 今回のアマゾンの配送センター組織化は、上部組織を持たないアマゾン労働組合(ALU)によって成功に導かれました。ALUは2020年に、同センターで新型コロナウイルス対策が不十分で危険だと職場放棄を組織したクリスチャン・スモールズさんが委員長になって結成された労働組合です。スモールズ委員長は、職場放棄を理由に解雇されていましたが、その後組合結成に取り組んできました。認証選挙では結成賛成2654票、反対2131票で、523票差は事前の激しい組合攻撃からすれば、予想以上の差になりました。ちなみに、2021年にアマゾンが組合結成妨害に投じたのは430万ドル(約5億5240万円)とされています。

ALUの組合ポスター「団結すれば、変化が起きる」


 JFK8では、多言語の移民労働者が多く働いており、労働者の離職率も高く、スモールズさんのように何か会社に抗議すればすぐに解雇されるという環境でした。米国のアマゾンでの組合組織化は困難とされていましたが、今回多くの青年が組織化キャンペーンに参加しています。このことはスターバックスで進んでいる組織化とも共通しており、従来の全国組合主導型の組織化とは異なっているという指摘もあります。


青年が立ち上がる背景

 

 ここ数年政治的な背景が大きく変わりました。労働組合を積極的に支援することを打ち出したバーニー・サンダース上院議員が大統領選予備選挙で活躍しました。人種差別に反対するブラック・ライブズ・マター(BLM)運動、サンダースキャンペーンに刺激されて急速に広がった米民主的社会主義者(DSA)に参加している青年たちが、労働組合の結成に積極的に参加し、運動しているのです。最近のこれらの労働組合組織化キャンペーンで、ベテランの組織オルグ主導というケースはむしろまれと言えます。
 

 青年労働者自身が結びつき、労働組合について労働者一人ひとりに職場や近隣のコーヒーショップなどで対話を組織していく。この組織化の基本中の基本に取り組んできたのです。組織化に参加する仲間を増やし、最終的にはほぼ正確に認証選挙での票も読めているといいます。米国でキャンペーン型の組織化モデルが、さまざまな形態で社会運動、労働運動の中で共有され、多くの青年労働者にも共有されていることが大きいと思います。

 

一時の熱狂ではすまない

 

 しかし日本でも一部の報道で見られますが、青年の「労組起業家」が組織化の中心であるかのように、これまでの運動の蓄積と切り離された動きとみるのは早計です。今回の組織化の成功はさまざまなメディアで報道され、米国労働運動の大きな転機となる可能性を秘めているだけに、今後もさまざまな分析や評価がされると思います。そのことを前提に、現在までに分かっているだけでも、例えば最後の数週間、米国の民間企業の組織化を成功させてきたジーン・ブラスキンというベテランオルガナイザーが、ALUに集中的にアドバイスをしていたとされています。またホテル・レストラン労組(UNITE-HERE)もオルグを派遣し、運輸物流労働者を組織するチームスターズも今後の組織化での支援を申し出ています。「新しい」キャンペーンと単純には評価できません。
 

 そして、JFK8の組織化は偉大な一歩であると同時に、直ちにJFK8のすぐ隣のLDJ5、DYY6という別の配送センターでも組織化キャンペーンが開始されています。全米各地のアマゾンの施設に運動を広げることができるかによって、この運動が一過性のものではないということが証明されるのだと思います。

今回勝利したJFK8に続き、組織化キャンペーンがすすむDYY6に貼られた多言語の組合ポスター


キャンペーン勝利とこれから


 スターバックスの組織化では、ニューヨーク州バッファローで21年12月に最初の組合認証選挙の勝利があって以降、4月25日の時点までに組合認証選挙が32店舗で行われ、29で結成賛成が上回っています。大学院生講師の組合も、コロンビア大学や4月に新たに結成されたマサチューセッツ工科大学(MIT)など、各地で結成が続いています。そしてニューヨークのアップルストアでも認証選挙のNLRBへの申請の動きがあります。アマゾンのようなグローバル大企業かつ労働組合敵視の企業での組織化は、労働者を励まします。


 パンデミックの中で、労働に対する考え方が変わり、労働組合の活動にも変化が起きています。今回の組織化でもクラウドファンディングなどの新しい手段が活用されると同時に、組織化のキャンペーンの基本原則は徹底的に追求されていました。1年前投票で負けたアラバマ州労働組合組織率が6%、ニューヨーク州は20%を超えていたことも大きな違いです。これらは既存の労働組合にも変化を与えるでしょう。


 これから最初の協約を結ぶことができるかなど、ALUにはまだ困難が待ち構えています。米国の労働組合運動の新しい組織化の動きに注目すると同時に、日本での運動に生かせること、学ぶべきことを探求していきたいと思います。

 

( 月刊全労連2022年6月号掲載 )

 

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【秋田】労働組合を作ったワケは、対等に経営者と交渉するため。経営者側からの一方的な不利益な条件変更を阻止! 本荘由利森林組合労働組合の場合 #労働組合ができること 秋田県労働組合総連合 労働相談担当 越後屋 建一

組合結成で一方的な不利益変更を跳ね返す 本荘由利森林組合労働組合 地域労連とともに要求実現へ


 労働相談センターを担当して22年、やっと落ち着いて相談を受けられるようになった。「給料日に給料が出ない」「休み明けに出社したら、事務所が空っぽだった」など、単組の経験しかなかった私にとって、「そんな、ばかな…」と思う相談が、次々に入ってくる。いろんな方に助けられ、問題解決にあたり、その中でいくつか労働組合も結成された。地域で元気に活動している組合も少なくない。


 2021年3月、4人の男性が「職場のことで相談がある」と県労連事務所を訪ねてきた。「本荘由利森林組合の方々である。本荘由利森林組合は、鳥海山の麓に広がる「由利本荘市にかほ市」の民有林を管轄とし、約8万ヘクタールを有する県内屈指の森林組合である。相談は「そんなことがいまだにあるのか」というところから始まった。就業規則には一時金は2.5か月と記載。しかし、その通り支払われていない。実績は1ヵ月。理由を尋ねても、「そう決めたから」の返事のみ。加えて賃金表を公務員賃金同様に細分化し、昇給幅を一方的に変更昇給幅は恣意的に決められ、同じ勤務年数で大きな格差が発生していた。行き過ぎと思われる上意下達の職場運営もあって、不満が高まっていた。その改善には労働組合が必要と判断し、最初から「組合を作る、交渉する」ことが前提の相談だった。


学習しながら仲間をふやし、組合結成へ


 それから半年間、職場の問題点を整理し、労働法の基礎を学習し、仲間を増やしながら結成の準備を進めた。最初は男性だけだったが、女性職員が加わると要求討議が活発になり、要求書も厚みを増した


 組合は上部団体を持たないが、地域労連に加盟。地域労連の支援を継続的に受けながら活動する体制を取った。9月14日、結成大会で確認した要求書を結成通知とともに森林組合長に提出。その時、対象の90%が組合に加入していた。組合長・理事会は、組合結成は受け入れたものの、要求への回答は「弁護士と相談している」などと引き延ばしてきた。労働組合側は短気を起こすことなく、経営側に粘り強く回答を迫り、その間に仲間を増やした。現場職員の蜂アレルギー検査実施などの要求は、回答がなくても業務的に改善させたやっと回答が出た12月28日には、ほぼ100%の組織率となった。

本荘由利森林組合労働組合の結成大会の様子


 22年春闘の時期と重なってきたことから、地域労連も組織を挙げて要求実現に向けた支援体制をとることにしている。菊地執行委員長は「組合結成後の活動は、私たちにとって未知数。たくさんの困難があると思うが、これからも地域労連の方々の力を借りて前に進んで行きたい」と力強く抱負を述べている。農林水産業秋田県の基幹産業地域経済の活性化の活動を研究し、提言する県労連にとって専門家集団が仲間になったことは喜びが大きい。地域労連も活性化している。これを教訓に、相談と組織化を続けていきたい。

 

( 月刊全労連2022年3月号掲載 )

 

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非正規労働者の契約更新時に、弱みに付け込んで酷い労働条件に変えようとする経営者が増えています。これはその一例。もしもあなたの身に起こったら…私たちにご相談ください。#職場の悩み全労連が聞きます

労働相談から見える非正規労働者の実態

長野県労連事務局次長 岩谷 元気



 春闘まっ只中のある日。朝イチでメールチェックをすると、年齢、性別などプロフィールが不明な相談メールが入っていた。内容も抽象的でよくわからない。文面から相談者の混乱ぶりが伝わってきた。

 

コロナ禍の非正規労働者


 その後返信がありメールをやり取りするうちに、相談者について以下のことが分かってきた。


•多店舗展開する全国チェーンの非正規労働者
•家庭との両立のため自宅近くの店舗でパート勤務
•困難は多いものの、現在の働き方でなんとか生活は成り立っている


 コロナ第1波から1年が過ぎ、各社がコロナ対応を進める中で、相談者の勤務先が打ち出した対応は、非正規の所定時間短縮、勤務地を広域化し複数店勤務とするなど、「少ない人員をより都合よく使う」というものであった。


 前述の通り、相談者は現在の働き方が少しでも変わると、生活が崩壊してしまう状況にあり、日によって勤務地、労働時間が変わる労働条件は受け入れられるものではなかった。契約更新を前に提示された契約変更を拒否できないかと方法を探し、全労連HP(全労連|労働相談ホットライン【フリーダイヤルはおかけになった地域の労働相談センターにつながります。】 (zenroren.gr.jp))にたどり着き、相談に至った。


 契約更新が目前に迫っていることもあり、会社を刺激しないよう、最初は後方支援という形で関わることになった。相談者は半年契約であったが、5年以上勤務しているため、契約変更を拒否することは法的には可能だった。しかし契約更新時の変更ということもあり、拒否を理由に雇い止めを通告される恐れもあった。そこで契約変更の拒否と無期転換の申し入れを同時に行うこととした。相談者には、以下の手順で進めるよう助言した。


•口頭のみでの協議はせず、新しい契約内容が書面で提示されるまで協議には応じないこと。
•書面が提示されたら、不利益部分と契約期間に取り消し線を引いて提出すること。
•その後、会社から再提出を求められても、新契約の発効日までは一切応じないこと。


 相談者は助言の通り実行し労働条件の維持に成功したが会社の圧力は予想を超えるレベルだった。

 

想像を絶する非正規差別


 法的な手続きを踏んだ申し入れにもかかわらず、相談者の上司はその効力を認めず、繰り返し契約書の再提出を求めてきた。その回数は、申し入れ後の1ヵ月間になんと4回。相談者の主張を受け入れる素振りを見せながら、書面の内容は変えない。根拠のない法律論を持ち出すなど、なり振り構わず圧力をかけてきた(写真はその時に送られてきたメール)。相談者は会社初の無期転換で、自分の担当部署から出したくないという、ある管理職の意向が強く働いたようだ。非正規と社畜正社員で成り立つ、多店舗展開ビジネスの深い闇を見た一件だった。

上司からの圧力(実際のやりとりのスクショ)

 

 今回の相談を通して無期転換について詳細な情報を得ることができた。労働相談には未組織職場の実態把握という役割もある。組織拡大という成果につながらない相談でも、継続的な関係をつくることで得られるものもある。荷は重いが降ろしてはいけないと思う。

 

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「コロナで高校生の息子のバイト先から休業指示があったのに、休業支援金が支払われない」という相談が。労働組合が労働局と交渉した結果は? #労働組合ができること おおさか労働相談センター 事務局長 福地 祥夫

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春の労働相談ホットライン


 3月2日の春のホットラインに高校生A君の母親から相談があった。


 友人を誘い近所の居酒屋でアルバイトを始めたが、コロナ感染拡大を理由に「休むよう」店から指示された。二人は連絡を取り合いながら新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の申請書手続きをしたが「書類不備」で送り返されてきた。休業支援金集中処理センターと連絡を取り書類のやり取りを行う中で、友人にだけ「未成年なので」と親の承諾書が送られてきた。A君には承諾書が同封されていないので問い合わせたが説明はなかった。しかし後になって「親の承諾書が必要」と書類が返された。さらに処理センターから「事業所と確認が取れない」、「申請を取り下げるか」との電話がスマホに入った。A君は申請を諦め、友人をバイトに誘ったことに責任を感じている。
 母親は処理センターの対応に電話で抗議したが「全く聞く気がないような対応、どうすれば良いのか」との内容だ

 

休業支援金・給付金申請に関する労働局交渉


 コロナ関連の休業支援金・給付金では「事業所の協力が得られない」「労働局の対応が悪い」との相談が早い段階から寄せられていた。労働相談センターは1月18日に大阪労働局と交渉を行い、労働契約書や給料明細の発行をしない事業所が多い実態を訴え、事業所が協力しない場合でも「労働者を守るため血の通った取り組みを」と申し入れ、労働局からは「事業主が協力しなくても、シフト表や振込通帳など労働者が提示する資料をもとに、事業所への確認を行い総合的に判断するとの回答があった。

 

A君の問題での労働局交渉


 A君への対応は丁寧とは到底言えない。「親の承諾書が必要」な未成年のスマホに電話を入れ「申請を取り下げるか」というのは申請制限に繋がるとして、A君の母親を伴い労働局と交渉を行った。
 冒頭、A君の母親から経緯を説明。1月18日の回答をもとにA君への対応を抗議。改めて未成年者を含めた申請者への丁寧な説明と対応の徹底と、二人の申請手続きを早急に進めるよう申し入れた
 処理センター室長は対応の不備を認めて謝罪し、その場で書類のチェックを行った。結果、「書類に不備はない」として「処理を進めるよう指示する」、「現場への注意・指導を徹底する」と約束した
 後日A君の母親から「支援金の振り込みがあった」と電話があり、「組合のお陰でここまで来られた、相談して良かった」との感謝の言葉があった。

 

労働組合への信頼から組織化に


 今回は組織化に繋がらなかったが、労働組合に対する信頼は得られたと確信している。労働相談活動の第1は未組織労働者の組織化であり組織拡大である。しかし、今回のように労働組合への信頼を得ることで終わる相談活動も無意味とは思わない。


 「労働局、労働基準監督署ハローワークなどの窓口対応は不適切」とされるが、たとえ組織化につながらない相談であっても、労働者に付き添って行政に掛け合い労働者の要求実現に奮闘している労働組合や相談員は大勢いる。そうした取り組みが労働組合への信頼、そして組織化に繋がると確信し、夢とロマンを持って相談活動を続けたい。A君が将来、不利益な扱いを受けても諦めずに労働組合に相談することを、そして組合加入することを願って。

 

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「妻の同僚が職場でパワハラにあっている。そちらの #労働組合ができること はあるのか?」というストレートな問いに、真正面から答えた結果は? JMITU三多摩地域支部執行委員 杉本 正巳

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 「妻の同僚が職場でパワハラにあっている。いろいろ相談に行ったがうまくいかない。そちらの労働組合はどんなことができるのか」と電話が入った。労働組合は組合員の労働条件全般に対して会社と交渉を行うことができる。会社がこれに応じないことは法律で禁止されていて、パワハラも交渉できる」と説明。すると数日後、介護施設で働く女性から連絡があり、二人の同僚を連れて相談に来た


 相談者の訴えは「パワハラで困っている。18年勤続、当初から常勤を希望するも、非常勤のままとされ、さまざまな嫌がらせを受けてきた。1年半前に無期転換を申し出ると、同僚との間にパーティションを置かれ孤立させられた今、相談者(受付)を現在の勤務部屋からロビーに移動し、さらに孤立させようとしている。血便、睡眠障害、めまいを起こし、心療内科の診療予約をした」というもの。


体を何より大事に、事実を聞き取り、要求書を作成


 組合からは、「まずは、体を最優先すること。医師の診断を受け安静加療の指示があれば休職すること、それまででも、体がきつければ休むこと」を最優先事項として助言した。幸い、相談者は、聞取りに耐えられる状態であったので、12月5日、12日、21日の3日間で聞取りを行い、ハラスメント事実を5W1Hで文書化した。18年に及ぶ出来事の「いつ、どこで、だれが」を特定するには、3人の記憶をすり合わせながらの作業が効果的だった。
 1月にかけて要求書を作成。合わせて、事実と組合の主張を説明する「要求説明書」も作成した。要求説明書では、ハラスメント事実を明らかにするとともに、ロビーへの追い出しを正当化する文書への反論も行った。施設は、今回の処置は、政府発行の「新しい生活様式」の中で「オフィスは広々と」と推奨していることの実践であるとした。「要求説明書」では、他のコロナ対策がおざなりな中、「オフィスは広々と」だけを強調する片手落ちを指摘し、ロビーでの受付業務は、利用者の個人情報・プライバシー保護に逆行する旨の指摘を行った。


回答は要求を否定─しかしパワハラは止まった


 組合加入通知と団体交渉申入れを行う段になったが、施設長がいなければ、パワハラ行為者である副施設長が対応しかねない。1月13日、施設長が在園と確認して来訪。無事、施設長に申入れを行った。
 団交は、コロナ緊急事態宣言が続き開催できず、2月15日に回答書を得たにとどまった。回答書には、受付のロビーへの追い出しを問題ない、パワハラは否定した。しかし、実際にはロビーへの追い出しはなくなり、嫌がらせもなりを潜めていたこれを受けて、組合として、団交はいったん中止し、常勤化要求を中心とした交渉を準備することとした。


組合員拡大─活動参加


 この職場では、仕事の在り方に不満を持つ労働者が多数おり、組合員との対話で加入が進み、現在では8人の組合員となった。それぞれが不満・要求をもっており、丁寧に聞き取りながら、コロナの中、文書団交によって要求の前進を図っている。最初の3人は、組合勧誘や打合せの連絡調整など中心的に活動。支部大会で、新たに会計監査になってもらったり、メーデーに出演したりと活動参加が進み、分会づくりも視野に入れ、支援を続けている。また、相談の中で、入所者やその家族へのぞんざいな扱い、施設の安全性などの問題も提起されており、市議会議員とも連携して対応している。

 

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