月刊全労連・全労連新聞 編集部

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【緊急オンライン公開 #そごう・西武労組のストライキに連帯します】 ストライキ中の労働者には、さまざまな葛藤がつきまといます。世間から「Z世代」といわれる世代の執筆者が #ストライキやってみた。不安が頭をよぎる中でかけられた、最もうれしかった言葉とは? 生協労組おかやま執行委員 村田しんり

23春闘でのストライキを通じて感じたこと
~生協労組おかやまの執行委員になって1年目を終える若手役員より
 

生協労組おかやま執行委員 村田しんり


 世間から「Z世代」と称される私たち。定義は曖昧だが、自己の価値観を重視する傾向があり、何事にも効率重視で情報の取捨選択が得意とされる。そんな私たちが労働条件に納得できないとき、どうするか。「早々に見切りをつけて、求めるキャリアビジョンと合致する仕事へ転職する」「自分の能力を高く評価してくれる、より良い条件の職場を探す」などの選択が自然と思い浮かぶ。納得できなければ離れる、それすら億劫なら諦める、それが当たり前な世代。それでも私が労働組合を通じて声をあげ、どういうわけかストライキにまで参加するようになった経緯を述べる。

 

生協で働くということ


 私は今の仕事に誇りを持っている。スーパーが遠く、車も手放して買い物にいけない年配の生協組合員に生活必需品を届けたときの笑顔。地域に越してきたばかりのお腹の大きな女性に、生協の離乳食や子育て支援の取り組みを案内したときの安心した表情。人のくらしに関わり、ゆとりある毎日を過ごす手助けのできる、素晴らしい仕事だと思う。この生協で働き続けたい。そして共に働く全ての仲間が当たり前にゆとりある生活を営み、夢を持って働き続けられるような組織であって欲しい。しかし、相次ぐ値上げ、電気・ガス・インフラ代の高騰もあり、その「当たり前」は遠のいて行くばかりだ。


 地域の人々のくらしを支えるこの仕事を愛しているからこそ、労働条件を改善するため、行動を起こしたい。団体交渉でストライキ決行の判断をしたとき、自分でも驚くほどストライキ参加に抵抗は無かった。ただ現場で働く私にとって懸念があるとすれば、「生協組合員の目にどう映るか」という一点だった。担当配達員がストライキに打って出たとなると、代理の職員が注文商品を届けるとはいえ、不安にさせてしまう結果に繋がらないだろうか。駅前でのスタンディング中も、頭によぎるのは生協組合員の顔だった。「こんなことで生協さんは大丈夫なの?」「不安だわ」「間違いなく配達してもらわないと、生活が立ち行かない」そんな声を想像してしまう自分がいた。

 

ストライキで得た確かな手応え


 私たちの思い切ったスト行動は注目を集めた。人通りの多い駅前でのスタンディングはメディアの取材も受け、新聞・ニュース等で取り上げられる結果となった。

 あまりの反響に初参加の私は戸惑うばかりだったが、最も衝撃を受けたのは後日、生協組合員宅を訪れた際にかけられた言葉だ。いつも朗らかな方が真剣な顔をして言った。ストライキしてたでしょ。ニュースに似てる人が映って、配達に来たのが別の人だったから、やっぱり村田さんだったと分かったの。生協さんって随分待遇が良いのかと思っていたけど、本当はつらかったの? 酷い働かされ方をしてるんじゃないのよね? 私たち組合員が暮らしていけるのも、村田さんがこうして安心のコープ商品を持ってきてくれるから。そんな村田さんに苦しい想いはして欲しくない。応援してるからね」。そのような温かい応援の言葉をいくつも頂いたのである。私がどのような想いでストライキへ至ったか、伝えたいことは沢山あったが、どれも言葉にならなかった。ストライキを打つにあたって掲げた具体的な要求が達成されるより先に、確かな手応えを得ることが出来たのだ。

 

ストライキの効果、誰一人取り残さない進め方を目指して


 私個人としては非常に得るものの多い経験となり、近隣の労働組合からも良い意味で注目されるストライキとなった。しかしながら、団結してストライキに臨んだ私たちにも、一枚岩とはいかない部分もあった。ストライキ当日の早朝、県内各所にある配送事業所の門前にて出勤してくる労働者にストライキ決行中のビラを配った。この行動についても賛否があり、「深刻な欠員の中、職場の仲間に無理を言ってストライキに出ているのに、やることがその職場でのビラ配布なのか。もっと理事会に対して直接訴えるような手法はとれないのか」といった意見も挙げられた。私は、その場では漠然と「(確かに、一理ある)」と感じた。


 門前ビラ配布のメリットを再度確認したところ、①職場全体の関心を持続させる目的、②対外活動へ向け内部でパワーをためる目的の二点が重要とのことだった。しかし、議論の中でその他の利点や理屈を説明されても、いまひとつ腑に落ちない。なぜここまで感覚にズレが生じるのかと考えたとき、はじめて理由らしきものに思い至った。早朝、ビラを配りに出向いた際も、幸いなことに私の職場では皆快くストライキへ送り出してくれた。そればかりか大幅賃上げや労働条件改善への期待を込め、激励の言葉で背を押してくれたのだ。そのような環境に慣れていたため、職場の理解を得る難しさを感覚的に理解することが出来なかったのだ。深刻な欠員に悩まされる職場では、ストライキ参加で仕事に穴を開けること自体に苦い顔をされる場合もある。当然のように送り出して貰える職場ばかりではない。しかし、足並みを揃えて要求を実現するためには、全ての職場の仲間を誰一人取り残さない進め方が重要となる。そのためにも、内部の団結を高める手法は重要な役割を有していたのだ。

 

さいごに


 ストライキに参加することによって多くの学びと教訓を得ることが出来た。ストライキ決行がどのような影響を及ぼすか、どう見られるかなど不安は付き纏う。しかし明確な目的を以て行動することは、労使交渉において決定的な一手となり得るはずだ。今回の事例が私と同じ理想を抱き、同じように何か行動を起こしたいと考えている誰かの背中を少しでも後押しすることを願っている。

 

( 月刊全労連2023年7月号掲載 )

 

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