月刊全労連・全労連新聞 編集部

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保育園児の子育てと夫の母親の介護をかかえて大忙しの毎日。そんな真っ只中、ただでさえ忙しいのに、なぜ労働組合の議長職を引き受けたのか? 愛労連議長 西尾 美沙子

愛労連初の女性議長になって~等身大の私についてのお話~
愛労連議長 西尾 美沙子

 

はじめに

 

 昨年7月に愛労連の7代目で初の女性議長となった。愛労連事務局に着任したのは2月からの新参者。文書管理やパソコンの管理、物品の場所などまだまだ分からないことばかりで、事務局のみなさんに教えてもらっている状況だ。事務所のメンバーは男女半数という状況で、とても和やかに支えてもらっている。


 今日は等身大の私について話したい。はじめに議長になった経過、出身単産について、労働組合にも女性の参画をという点と、女性が参加しやすい組合活動に、ということについて話したいと思う。

 

労働組合に関わるきっかけ

 

 私の出身は愛知県医労連だ。1993年、大学を卒業して1年目の年に、瀬戸物で有名な愛知県瀬戸市の精神病院でソーシャルワーカーとして働いており、患者さんの人権が守られないということや、賃金の一方的な切り下げが行われ、労働組合が結成されて愛知県医労連と尾東労連に加盟した。その病院の院長は女性の医師で、労働組合をものすごく毛嫌いしており、診療のサボタージュや、病院長が組合員に組合脱退届を書かせるといった不当労働行為が続き、組合脱退が続くという状況がうまれていた。こうしたなか、組合を辞めなかった私を含めた組合役員5人に対して不当解雇がされたが、労働委員会や裁判闘争を行い職場復帰した。

 

時間が取れないなかで

 

 愛労連議長の話があった時は、子どもが保育園の年中になる子育て真っ盛りのときで、家には要介護2の夫の母親がおりで、とても引き受けられる状況ではなかった。しかし、労働組合への参画の敷居を下げたい、スーパーヒーローでなくても良い、もっと女性の要求や育児要求、非正規の要求などの労働組合活動を身近に感じてもらいたいという思いと、全労連で小畑さんが議長になったことにも背中を押され、議長になる決意をした。


 愛労連でも夜や土日の会議が多い実態がある。そうしたなか、愛労連四役の方が「私たちは単組の活動をして、産別の活動にも参加し、愛労連の活動にも参加して本当に大変なんだよ。10円ハゲができてるよ」と、率直に話してくれた。愛労連での役員の女性比率は14%で、1月の臨時大会、昨年7月の定期大会も女性代議員は18%にとどまっているのが現状だ。そうしたところを変えていかなければいけないと思っている。


 私自身もとにかく時間がない。本も新聞も読めない。Zoomで顔を見て、「何か変だな」と思ったら眉毛を書いていなかった日もあった。そんな慌ただしく、切れ目のない生活を送っている。

 

時間が取れないという女性の共通の問題

 

 私だけではなく、多くの女性は切れ目なく仕事や家事、介護などをやっていると聞いている。精神科で働いているときには、女性の患者さんが男性より多かったが、それは、女性の切れ目のない活動がうつ病を発症させていくのだという経緯を学んできた。
 

 女性の役員比率に努力している組合もある。名古屋市職労では、女性の役員比率は5割を突破し、女性だけではなく会計年度任用職員の方2人にも役員になってもらって、当事者が運動に参加するスタイルを確立している。愛知県医労連や福祉保育労東海地本でも、女性役員比率が5割以上となっている。


 女性の時間がない問題については、日本の置かれている労働実態を見て、労働時間短縮のとりくみや年次有給休暇の時間取得、有休取得促進、子どもの看護休暇や介護休暇の拡充、職場の理解や労働環境の改善を進めることが大切だ。女性だけでなく男性にもやさしい労働環境をつくることが大切だと思っている


 子どもが産まれてすぐのときに、日本医労連の中央執行委員をやっていた。大会や全国医療研などで託児所も設けてくれており、私の活動、学ぶ場を保障してくれた。そうした男性も含めた子育て中の方が参加しやすい環境を整えることは、労働組合としてもできることなので、とても重要なことだと思っている。会議の会場や時間帯、宿泊などの活動スタイルの検討などを保障しながら、組合活動に参加すると楽しいということをどんどん発信して、子育て中の人も介護などを抱えた人も「役員になって」と積極的に声をかけていくことが大切だと思っている。

 

ケア労働者の賃上げキャンペンーン

 

 愛労連として力を入れているのが、ケア労働者の賃金引上げだ。エッセンシャルワーカー大幅賃上げ・増員プロジェクトチーム(以下、プロジェクトチーム)をつくり、これまでに会議を5回開催している。そこでの女性参画率は37%だ。会議の女性の参加率が高まると、「参議院選挙でエッセンシャルワーカーの賃上げが餌にされたくない」、「いや。私たちはその餌すらもらっていない」などリアルで率直な意見が言い合える運営になっていくと感じている。女性の参画が増えると、会議が豊かになるように思うし、「メーデーでエッセンシャルワーカーのみんなに舞台に立ってもらおう」といった機動性のある運営になっていき、運動にもプラスになっていると思う。

 

エッセンシャルワーカー大幅賃上げ・増員プロジェクトチームのみなさんと取り組んだ名古屋駅前宣伝にて


 私が精神保健福祉士から愛知県医労連の専従者になろうと思った理由は、介護労働者の賃金や劣悪な処遇を、社会的役割にふさわしい条件に変えていきたいと思ったからだ。障害や高齢者、子ども、病気を持った人は、自分の気持ちを表現できない人もいる。そういう人たちの思いや願いをくみ取る、尊厳を守るケアの専門職だからこそ、働く人の尊厳も同様に大切だと思う。


 このプロジェクトチームは、自治労連医労連・福保労・建交労・生協労連の5単産で取り組んでいるが、一緒に会議に参加し、行動に取り組んで、それぞれの職業や組合への理解が深まり、愛労連への結集も強まったように思う。ケア労働にたずさわる人たちのやりがいと希望を、ケア労働にたずさわる人たち自身の言葉と行動で、より良く変えていくためにがんばっていきたいと思っている。

 

女性が労働組合の役員になる意義

 

 私が議長になり、周りのみんなが喜んでくれたり、知らない人が喜んでくれたり、かつて組合役員をやっていたという80代の女性が喜んでくれたりと、大きな反響があった。まだ実感として分からないところもあるが、女性に参政権がなかった時代のことを考えると、組織のリーダーに女性がなるというのは「そういうことなんだ」と感じている。女性が役職員になっていく、広げていくことが大切なのだということも実感している。


 私自身は自己肯定感が低く、大役の議長職がこれで良いのかという思いも常に付きまとっているが、事務所でこの原稿のことを話していたら、隣のベテランの先輩が、私が昨日の帰り際に、“今日のご飯何にしよう”とつぶやいたことに対して、「子育てをしながら組合役員をやって、大変な思いでがんばっていると痛感したよ。自分が子育てをしていた時のことを振り返ったよ」と話してくれた。思いを汲み取って今の私を認めてくれる仲間がいることがすごくうれしくて、涙がこみ上げてきた。労働組合活動は一人ひとりの生活や背景を思いやって活動していく、その人が等身大で活動できる、そうした関りを持って接することが大切なのだと改めて感じる経験だった。女性の役員が増えることで、相手の思いに立ち返ることが広がるのではないかと感じた。誰もがその人らしく活動できる組合活動は、より良く変える力につながっていくと思う。


 一人ひとりの組合員や社会を構成するメンバーが尊厳を持って生きられる、女性の参画が増えることで、人間らしく働きがいのある仕事と生活に繋がっていくし、私自身もそうしていきたいと思う。

 

さいごに

 

 まだまだ足りないことばかりだが、最賃の課題、非正規の均等待遇、エッセンシャルワーカーの賃上げなど諦めずに怒りを持って声を上げていく仲間とつながり、ビッグウェーブをおこし、要求実現までみなさんと一緒に頑張りたい。

 

 さいごに、7月の全労連大会でははじめての保育室を準備していただきありがとうございました。子どもと一緒に大会に参加する機会をつくっていただいたことに感謝します。全労連はあったかいと感激しました。子どもはセミとりや折り紙などができて、たのしかったと言ってます。

 

( 月刊全労連2022年10月号掲載 )

 

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