非正規外国人労働者の処遇改善にむけて コロナ禍のなか春闘で要求実現を
支部長 井伊 博之 ミルトン
私がブラジルから日本に渡り、三重県亀山市にある日東電工亀山工場で仕事を始めてから今年で21年目になる。当時から仕事は忙しく、月80時間以上の残業は珍しくなかった。その間、劇薬を扱い健康被害を受けて仕方なく帰国した人もいる。リーマンショック後は仕事量が減り、会社から賃金や待遇をカットされた。その当時マイホームを購入した人たちは、ローンの返済ができなくなり、念願のマイホームを手放す事例が次々とでてきた。私もダブルワークをしながら生活とローン返済で両立していた。
《会社を交渉の席に座らせるために労働組合を結成》
私たち外国人労働者は2010年、会社の下請け会社の派遣社員から直接雇用(有期契約)労働者に切り替わった。偽装派遣対策だ。その頃、各職場のリーダー的ブラジル人労働者が製造部の責任者に話し合いの場を要求し、苦しい生活実態を訴えたが、1年経っても回答はなかった。既存の労働組合への加入も正社員以外入れないと断られた。このままだと労働環境や賃金の改善はできない。まわりのブラジル人労働者に悩みを打ち明けると、同じ様に悩んでいることを知り、非正規雇用労働者の組合を立ち上げることにした。
調べると津市にある地域組合・中勢地域労働組合がある事を知り、相談に行き、実態を話し、問題点や指導を受けた。そして、あっと言う間に組合結成へ話がすすんだのである。
組合結成の決心から準備期間を経て2012年3月に80人の仲間を集め、結成した。翌月に公然化し、大阪本社と亀山事業所に要求書を提出した。
しかし、これまでの春闘は誠意の無いままだった。交渉が難航すると会社側は常に「不満があれば裁判しかない」と繰り返し言ってくる。社内の労使協議会でも会社側の代表者が大声で「不満があれば裁判しろ」と怒鳴ることもあった。
《そして裁判へ》
私たちも限界だった。仲間から「会社の希望通りに裁判しよう」「生活もかかっているからこれ以上待てない」の声があり、ついに裁判闘争に踏み切った。
それから今までの丸8年の活動は、決して平坦な道なりでなかった。わからない法律や会社側からの団体交渉拒否もあったが、重要な成果もあった。男女賃金差別解決は会社内にとどまらず、地域の企業にも広がった。
《長年の頑張りが実り、一気に数々の待遇改善へ!》
裁判闘争がプレッシャーになったのか、今春闘はコロナウイルスが猛威を振るう中、長年の要求を一気に勝ち取った。組合員は全員準社員になった。時給制が月給制に。支給のなかった賞与・退職金・扶養手当が支給になり、特別休暇やリザーブ年休の付与、夜勤手当のランク格上げ、福祉基金への加入などなど。
この国では、外国人労働者問題は増える一方だ。また、非正規雇用労働者は4割以上になる。そのような中、私たちのような非正規雇用外国人労働者の組合の歩みが、他の労働組合を勇気づけ、モチベーションになる。そのような貢献できれば幸いだ。
( 月刊全労連2020年8月号掲載 )
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