月刊全労連・全労連新聞 編集部

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「生理休暇」をとると「無給」かつ「ボーナスや昇給」で不利益になりますという会社の提案に対して、#労働組合ができること は? 郵政ユニオン女性部長 有村 三津

格差是正に逆行!生理休暇が無給に!?
郵政ユニオン女性部長 有村 三津

 

 2020年10月、私たち郵政ユニオン非正規の均等待遇を求めてたたかった「労働契約法20条裁判」では、最高裁判決で勝利判決を勝ち取り、有給の病気休暇、夏期・冬期休暇、扶養手当など5つの項目について格差が認められた。そのとき原告の1人は「歴史の歯車が回った」と喜びを語り、私たちはこれからの社会に希望を抱いた。


 しかし昨年の9月、会社は「労働契約法20条最高裁判決を踏まえた労働条件の見直しに関する基本的な考え方」を示してきた。その内容は、正社員の夏期・冬期休暇を削り非正規社員に付与する等、またもや正社員の処遇を削り非正規社員の労働条件の一部を改善するという考え方であった。

 

生理休暇を無給にするという企業側の対応

 

 特に有給の病気休暇については、無期転換した非正規社員(アソシエイト社員)に15日付与するが、正社員・非正規社員ともに31日以上の療養でなければ使えないとした。病気で休んでも30日までは無給、それと同時に病気休暇に含まれる「生理休暇」についても無給にするという許しがたい内容であった。


 しかも会社は生理休暇の取得による賞与・昇給の減算除外を廃止するとした。要するに、生理休暇を取得するとボーナスや昇給で不利益を受けるということだ。女性の社会進出が進むなかで、生理は働く女性には避けて通れない問題であり、多くの女性が辛い症状を抱えながら働いている。しかし、取得することにより不利益を受けるとなると、ますます生理休暇が取りづらくなってしまう。


 私たちはこの「基本的な考え方」にある生理休暇の問題を女性部で検討した。なぜこのような提案がされるのか、会社は女性にとっての生理休暇の重要性がわかっていないのではないか、と意見が出た。そして、会社提案を改めさせるために、私たち自身も生理休暇のことをもっと学ぶ必要があると感じ、「生理休暇」をテーマに学習会を開催することとした。学習会はコロナ感染対策のためリモート併用で行い、男性組合員も「女性の働く大変さを理解するために」とリモート参加してくれた。


 学習会のなかでは、女性の生理のしくみや母性を守る制度、民間企業の「生理休暇への理解を深める取組み」などが紹介された。講義を受けた後、女性組合員が職場で生理休暇が取りづらい状況や生理に関する辛かった体験等を次々と語り誰もが自分1人の問題ではないと実感した。男性の参加者からも「生理休暇の無給化がどれほど深刻な問題かリアルにわかった。絶対に認めるわけにはいかない」と感想が寄せられた。


 「1965年に26%の取得率だった生理休暇が今は0.9%と知り驚いた。なぜそんなに下がったのか」、「生理休暇が必要なくなっているとは思えない」参加者からこんな疑問も沸き、職場実態を知るため生理休暇の緊急アンケート調査春闘期間に実施することになった。

 

生理休暇の緊急アンケートを実施

 

 アンケート調査では回答者の87%が「生理休暇は必要」と答えており、約7割の人が頭痛や腹痛、吐き気など辛い症状を具体的に記入してくれた。中には、「痛みが酷く、薬でも抑えられない」、「痛みでベッドから起き上がれない」、「バイクで配達中に貧血で倒れそうになった」、「貧血のため通勤電車で気を失った」という回答もあった。また、「要員が足りない」、「職場の男性に理解がない」、「男性の上司に言いづらい」など生理休暇を取りづらい実態も多数寄せられた。生理休暇を削減するのではなく、取得しやすい職場環境にすることが会社のやるべきことだと感じた。

 

 

 

 

 

会社の「基本的な考え方」を受け、郵政ユニオンは反撃ビラを作成、全国で一斉に宣伝行動を行った。労働者の批判の高まりと運動によって、会社は当初の提案を変更し、「夏期・冬期休暇の削減を見送る」、「病気休暇を1日目から有給で取得できる」とせざるを得なくなった。生理休暇については、正社員・非正規ともに有給休暇を1日付与するとし、5月に非正規社員の制度改正が行われた。


 ただし、2日あった有給の生理休暇を1日に削減、「賞与・昇給の減算除外」は廃止としたままである。


 非正規社員へ有給の病気休暇・生理休暇が私たちの運動によって制度化されたことは、非常に大きな前進であることは間違いない。しかし、本来なら今までの制度を損なうことなく、正規・非正規社員ともに有給の生理休暇2日を付与するべきものだ。ましてや生理休暇を取得することにより不利益を受けるような制度改悪は、労働基準法の趣旨に反するものであり、許されない。


 日本郵政グループには、全国で正規・非正規を合わせて約40万人の社員が働いており、そのうち半数が女性だ。会社は女性の管理者を3割にする目標を掲げ、「女性活躍」や「ダイバーシティ」の推進を謳っているが、女性が社会で活躍することを阻害するようなこのやり方は、時代に逆行し、働く女性の権利を侵害するもので、社会に発信している会社方針と相反するものだ。


 4月に本社との団体交渉が行われた。生理休暇についてのアンケート結果を手渡した上で「7年連続で黒字経営を続けている会社が、なぜこのような提案をするのか? 生理休暇を削減しないと会社の経営に影響があるのか」、「このような提案をする理由を明らかにせよ」と追及した。本社は回答不能に陥り、「持ち帰ります」と言うのみであった。


 正社員の就業規則改定は10月だ。それまでにさらに運動を広げ、すべての女性が安心して働ける職場を作っていきたい。

 

( 月刊全労連2022年10月号掲載 )

 

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