月刊全労連・全労連新聞 編集部

主に全労連の月刊誌「月刊全労連」、月刊紙「全労連新聞」の記事を紹介していきます。

非正規労働者の契約更新時に、弱みに付け込んで酷い労働条件に変えようとする経営者が増えています。これはその一例。もしもあなたの身に起こったら…私たちにご相談ください。#職場の悩み全労連が聞きます

労働相談から見える非正規労働者の実態

長野県労連事務局次長 岩谷 元気



 春闘まっ只中のある日。朝イチでメールチェックをすると、年齢、性別などプロフィールが不明な相談メールが入っていた。内容も抽象的でよくわからない。文面から相談者の混乱ぶりが伝わってきた。

 

コロナ禍の非正規労働者


 その後返信がありメールをやり取りするうちに、相談者について以下のことが分かってきた。


•多店舗展開する全国チェーンの非正規労働者
•家庭との両立のため自宅近くの店舗でパート勤務
•困難は多いものの、現在の働き方でなんとか生活は成り立っている


 コロナ第1波から1年が過ぎ、各社がコロナ対応を進める中で、相談者の勤務先が打ち出した対応は、非正規の所定時間短縮、勤務地を広域化し複数店勤務とするなど、「少ない人員をより都合よく使う」というものであった。


 前述の通り、相談者は現在の働き方が少しでも変わると、生活が崩壊してしまう状況にあり、日によって勤務地、労働時間が変わる労働条件は受け入れられるものではなかった。契約更新を前に提示された契約変更を拒否できないかと方法を探し、全労連HP(全労連|労働相談ホットライン【フリーダイヤルはおかけになった地域の労働相談センターにつながります。】 (zenroren.gr.jp))にたどり着き、相談に至った。


 契約更新が目前に迫っていることもあり、会社を刺激しないよう、最初は後方支援という形で関わることになった。相談者は半年契約であったが、5年以上勤務しているため、契約変更を拒否することは法的には可能だった。しかし契約更新時の変更ということもあり、拒否を理由に雇い止めを通告される恐れもあった。そこで契約変更の拒否と無期転換の申し入れを同時に行うこととした。相談者には、以下の手順で進めるよう助言した。


•口頭のみでの協議はせず、新しい契約内容が書面で提示されるまで協議には応じないこと。
•書面が提示されたら、不利益部分と契約期間に取り消し線を引いて提出すること。
•その後、会社から再提出を求められても、新契約の発効日までは一切応じないこと。


 相談者は助言の通り実行し労働条件の維持に成功したが会社の圧力は予想を超えるレベルだった。

 

想像を絶する非正規差別


 法的な手続きを踏んだ申し入れにもかかわらず、相談者の上司はその効力を認めず、繰り返し契約書の再提出を求めてきた。その回数は、申し入れ後の1ヵ月間になんと4回。相談者の主張を受け入れる素振りを見せながら、書面の内容は変えない。根拠のない法律論を持ち出すなど、なり振り構わず圧力をかけてきた(写真はその時に送られてきたメール)。相談者は会社初の無期転換で、自分の担当部署から出したくないという、ある管理職の意向が強く働いたようだ。非正規と社畜正社員で成り立つ、多店舗展開ビジネスの深い闇を見た一件だった。

上司からの圧力(実際のやりとりのスクショ)

 

 今回の相談を通して無期転換について詳細な情報を得ることができた。労働相談には未組織職場の実態把握という役割もある。組織拡大という成果につながらない相談でも、継続的な関係をつくることで得られるものもある。荷は重いが降ろしてはいけないと思う。

 

全労連無料労働相談ホットラインを開設しています。職場で働くことで困ったことがある方は、お気軽にお電話ください。自動的に最寄りの相談所に繋がります。電話:0120-378-060 (平日10時~17時)