月刊全労連・全労連新聞 編集部

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全労連議長の日記『ぱたちゃんが行く🦒』#トイレの話をしませんか 小畑 雅子(@zenrorengicho)

 

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 10月に開催された「はたらく女性の中央集会」の分科会で、「地方の配送業務では、途中でトイレがなく、生理の時に困る」という発言が、郵政ユニオンの組合員から出されました。私が、埼労連で女性部長をしていた2000年代の初頭に、埼玉の自交総連のタクシードライバーを中心にした女性組合員のお話を聞く機会がありました。その頃、女性のドライバーが少しずつ増えてきた時期で、会社や事務所そのものに女性用のトイレのないところもありました。また、郵政の配送の皆さんと同じで、タクシードライバーの皆さんにとってもトイレの問題は深刻で、トイレマップのようなものを作ったらどうだろうかと相談したことを記憶しています。はたらく女性が安心して使えるトイレの整備は重要な要求です。

 

深刻なトイレ問題を要求で克服


 私が教員になった1980年代には、学校でも、トイレの問題は深刻でした。職員用のトイレがなく、子どもたちのトイレを使っていた学校もありました。私の勤務していた学校では、男性教職員用のトイレはあるのに、女性教職員のトイレはなく半地下にある児童用のトイレでした。そこは、あまり子どもたちが使わないからという理由だったように思いますが、釈然としません。しかも、中に入ると男女別のトイレなのですが、入り口は一つでした。分会として、女性用も含めて職員用トイレを整備すること、児童用のトイレの入り口を男女別にすることを要求し続けて、学校の改修に伴って、職員用トイレも児童用トイレも整備されたと記憶しています。


 全教女性部では、毎年文科省に対して、「文部科学省の学校施設整備指針や厚生労働省の快適職場指針の全面実施に向けて指導を強めること」とした上で、「すべての学校に、教職員用男女別トイレ・更衣室・休憩室・休養室を設置すること。また、設置状況について調査すること」を要請してきました。現在では、もちろん教職員用の男女別トイレの整備は、ほぼ100%になっていますが、整備指針にもとづいた配置を意識づけるために、要請書には掲げ続けています。さらに近年では、ジェンダー平等の観点から、「児童・生徒・教職員の性自認等のプライバシー保護に配慮した、トイレ・更衣室の設置を検討し整備すること」も要請項目に付け加えています。

 

コストを削減したい 使用者側意見の法令案


 職場のトイレの問題は、労働安全衛生法に基づき、事務所衛生基準にその定めがあります。厚生労働省は、この間、「事務所衛生基準のあり方に関する検討会」を立ち上げ、「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案の見直し」作業をすすめてきました。見直しの議論そのものは、2018年6月の働き方改革関連法成立の際の付帯決議において、「事務所その他の作業場における労働者の休養、清潔保持等の事業者が講ずるべき必要な措置について、労働者のニーズを把握しつつ、事務所則等の必要な見直しを検討する」ように求められたことを受けたことの対応とされています。しかし、検討会において、使用者側委員からは、「現実に即して見直せるものは見直す」という姿勢で、既存の規則が守られていない実態に法令をあわせ、コスト削減の視点から規制緩和を求める意見が出されました。これらの意見を受けて、7月28日に出された「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案概要」において、便所の設置基準について「男性用と女性用に区別して設けることが原則であること」とした基本方針はおいたまま、「少人数の事務所における例外」として、「同時に就業する労働者が常時十人以内である場合は、現行で求めている、便所を男性用と女性用に区別することの例外として、独立個室型の便所を設けることで足りることとすること」との案が示されました。

 

全ての人が安全で衛生的に、安心して利用できるトイレの設置へ


 これに対して、全労連は、省令案が、ILO120号勧告(5人以内もしくは家族従事者のみ許容)にも悖る提案であることを指摘した上で、男女別のトイレを要求する労働者の声を踏まえず、事業主のコスト削減論を軸に規則を見直すことは認められないと批判する意見書を厚生労働省に提出しました。合わせて、ジェンダー平等の観点から、男女別に加えて、独立個室型便房を置くことなど、事務所衛生基準規則に位置づけ、普及促進をはかるべきであることも意見書では触れました。


 10月11日に開催された労働政策審議会安全衛生分科会では、パブコメに寄せられた1542件の多くが、この改定に反対・懸念・不安を述べるものであったことが報告されました。また、労働者側の連合の委員からも懸念が示されましたが、「省令案」は概ね妥当との答申が審議会として答申されました。現在、厚生労働省において、12月上旬の施行に向けて、省令の改正が進められています。


 先ほど触れたILO120号勧告は1964年に出されたものですが、トイレについて「衛生施設」の項で、「労働者の使用のため、十分かつ適当な衛生施設を適当な場所に設け、かつ、適正に維持すべきである」としたうえで、「衛生施設には、十分なプライバシーを確保するように仕切りを設けるべきである」とも定めています。トイレは、私たちが生きていく上で、必要不可欠な場所です。その重要な場所が、すべての労働者にとって、安全で衛生的で、そして安心していつでも気兼ねなく使える場所であることが求められています。今回の事務所衛生基準の改定が、それと逆行するものとならないように、労働組合として、職場の要求に根差して、常に注視していかなければならないと思っています。


 同時に、これを機会に、もっとトイレのあるべき姿について話してみることも提案したいと思います。例えば、ある時「なぜ男性の小便器は個室ではないのか」という話になったことがあります。ぜひ、男性の意見も伺ってみたいです。そして、全教女性部の要求書や全労連の意見書でも触れた性自認等のプライバシー保護に配慮したトイレ」の在り方も議論する必要があります。誰にとっても、衛生的でプライバシーが守られ、安全で安心して過ごせるトイレについて、話してみませんか。

 

( 月刊全労連2022年1月号掲載 )

 

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