月刊全労連・全労連新聞 編集部

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【大阪】民間委託され、どんどん職員が雇止めされていく「学童保育」の現状を変えるために。自治労連 守口市学童保育指導員労組 #労働組合ができること

子どもたちのところに戻して!労働者の権利とよりよい学童保育を守るために

自治労連 守口市学童保育指導員労組 

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解雇撤回を求める指導員労組のみなさん

 

 全国で130万人以上の子どもたちが放課後を過ごす学童保育(放課後児童クラブ)。施設数の増加で、指定管理などの民間委託が進んでいる。大阪府守口市では2019年4月に学童保育が民間委託された。自治労連守口市職労の仲間は、委託先の共立メンテナンス団体交渉を申し入れたが一貫して拒否。昨年3月末に13人の指導員を雇い止めした。解雇撤回を求めてたたかう守口学童保育指導員労組の水野直美委員長、中尾光恵書記長に聞いた。

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中労委前で訴える水野委員長(右)と中尾書記長(左)

 

《声を上げた組合員を不当解雇に!!》

 

 大阪市に隣接する人口14万人余りの守口市には、14の小学校に21の児童クラブがある。公設公営長年運営されてきたこれらの児童クラブが、2019年4月から民間委託され、共立メンテナンス一括して受託。移行時に希望する職員は同社の契約社員となり、引き続き指導員として働いてきた。しかし同社は労働組合の団体交渉申し入れを拒否。新型コロナの感染拡大の一斉休校で、全国の学童保育で午前からの開所が迫られるさなかの20年4月に同労組員13人を雇い止めにした。

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共立メンテナンスに解雇撤回を求める要請する要請団(20年12月)

 

 雇い止めされた中尾書記長は「コロナ禍で大変な時になぜ解雇か。子どもたちの安全が心配」と憤る。団交拒否について大阪府労働委員会は19年4月に共立メンテナンスに対し「団体交渉申し入れに応じなければならない」とする救済命令をだした。命令の中では組合敵視の姿勢があることも認定。その後、中労委は即日結審し、現在命令を待っている。不当解雇については大阪地裁に解雇撤回を申し立て、裁判中だ。

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中労委に要請署名を提出(20年11月)

 

《民間委託で保育内容が変わり、保護者とも分断》

 

 中尾書記長は、「民間委託され今まで普通にできたことができなくなった」と言う。子どもたちと一緒に長期休業中に行ってきた手作りクッキングも回数を制限された。おやつは包丁を使っての準備が禁止され、果物の皮をむいて出すこともできなくなった。

 守口市では保護者会が活発で、子どもを真ん中に楽しい学童保育を保護者、指導員が作り上げてきた歴史がある。各クラブでの行事に加え、1000人以上が参加する全市的な運動会やお祭りも開催してきた。委託後は子どもたちのための自主的な行事も規制され、保護者との接触も制限。お祭りが15時までなのに、職員は13時半で勤務終了とし帰宅させ、子どもの安全も考えない会社。

 

《「ただいま」「おかえり」の声が響く、安心できる場に》

 

 保護者の運動が行政を動かしてスタートした学童保育は、今では子どもたちの放課後の居場所として欠かせない存在になっている。学童保育は1997年に法制化され、児童福祉法に根拠をもつ公的な事業となり、2015年には、省令が定められ指導員の資格と配置基準が「従うべき基準」として、面積や子ども集団の規模が「参酌すべき基準」として定められたが、その後「従うべき基準」から参酌化され、自治体独自の基準設定も可能になった。

 水野委員長は「学校と自宅の中間にある学童保育で、子どもたちはいろんな姿を見せてくれる」と言う。どの子も楽しく、安心して過ごせる居場所であるために、頭ごなしに決めつけず子どものしんどさ、背景に寄り添い、自分も指導員として成長してきたと語る。中尾書記長も「場所だけでなく、指導員と友達がいてこその学童保育」と話す。

 

《保護者と指導員が作り上げる学童保育は「宝」》

 

 全国的に民間企業運営前年比144%と大幅増となった(全国学童保育連絡協議会調査。2020年5月1日現在)。利益を上げるために委託費から人件費保育予算を削られ、保育の水準と指導員の労働条件の低下につながる。

 子どもの生活や育つ環境が厳しくなっている中で、子どもが安全に安心して生活でき、子どもの成長・発達を支え、励まし、保護者と連携しながら子育てをする学童保育は、公的な事業として社会的に求められている。

 学童保育の運営形態は自治台ごとに様々だが、労働組合で声を上げる例が増えている。共立メンテナンスによる守口市の学童指導員の不当解雇を撤回させ、指導員が安心して保育に専念できる労働条件、保育条件の確立をめざして支援と運動を広げよう。

 

 

主体性と責任を持った事業展開を 全国学童保育連絡協議会 佐藤 愛子事務局次長

 

 「子どもが好きなら」「子育て経験があれば」、それで十分という認識で指導員を雇用してきた自治体では、国の「新制度」施行後の変化に対応できず、指導員不足が慢性化しても、「自治体内のほかの非正規職員との均衡を考えると学童保育指導員のみの処遇改善はむずかしい」ことを理由に、非正規雇用のまま給与を抑えてきました。また、今年度四月から会計年度任用職員制度への移行に伴い、事業経費を低く抑えるため民間への委託が増えました。実施主体である市町村が学童保育をよりよくしていくために主体性と責任を持って事業を展開することが求められています。

 

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( 全労連新聞 2021年1月15日 第534号掲載 )

 

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