月刊全労連・全労連新聞 編集部

主に全労連の月刊誌「月刊全労連」、月刊紙「全労連新聞」の記事を紹介していきます。

障がい者雇用労働者が賃上げ求め1日ストライキ! オリンパスサポートメイト分会のたたかい 首都圏青年ユニオン #労働組合ができること

 2021年6月21日に首都圏青年ユニオンオリンパスサポートメイト分会の障がい者雇用組合員が、月額1万円の賃上げを求めてストライキを行った。


 ストライキに入ったのは4人の組合員。事業所の労働者7人のうち4人が組合に加入しており、過半数を組織している状態だ。ストライキの当日には、手取りが14万円という低賃金の実態を社会的に訴えるために、厚生労働省記者会で記者会見も行い、いくつかの新聞でも報道された。

 

「朝食にコッペパンの半分、もう半分を昼食に」


 オリンパスの特例子会社であるオリンパスサポートメイトとは、昨年から本格的に賃上げの交渉を続けてきた。これまで非正規雇用だった組合員の正社員化や、一時金(ボーナス)の創設などを勝ち取っていたが、賃上げについては結果が出せていなかった。そこで、今年の4月からの賃上げについては、絶対に勝ち取ろうと意思統一をしていたのだ。団体交渉を3回ほど行い、会社前宣伝も行ったが、賃上げ2000円という回答を引き出すにとどまり、目標に達しなかったため、ストライキを行うこととなった


 当日は記者会見を昼に行い、夕方に会社前ストライキ集会を行った。集会には40人ほどの支援者が集まり、当事者の組合員ら4人がスピーチ、賃上げ要請行動も行った。スピーチでは、「シャツ1枚買うにもためらってしまう」、「歯医者に行けない」、「恥ずかしながら、親から食糧の支援を受けている」、「借金をしている」、「朝食にコッペパンの半分、もう半分を昼食にとっている」など、生活困窮の実態が語られた。

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社前ストライキにたちあがった組合員のみなさん

最賃労働者のストライキ


 オリンパスサポートメイトで働く障がい者雇用労働者らはフルタイムで月額16万円ほどの給料であり、手取りにすると14万円ほど。オリンパスサポートメイトはオリンパスの特例子会社であり、100%子会社でもある。つまり、大企業グループの一部なのだ。それにも関わらず、従業員らは低賃金で貧困に陥っている。時給換算にすると1168円であり、最低賃金付近の労働者だ。日本の最低賃金が世界的にも低い水準にあることは周知の事実だが、オリンパスの当該組合員のような最低賃金付近の労働者が近年、急速に増加している実態がある。


 今後は、低賃金問題を労働者自身が声を上げて変えていく、そのような動きに繋げていければと考えている。日本社会の貧困・格差の問題の背景には低賃金の問題があり、低賃金とのたたかいは社会を変えていく上での根本的なたたかいである。
 残念ながら、今回のストライキでは目標の賃上げは達成できなかったが、賃上げへの足掛かりはできた。ストライキの経験で組合員の団結も強まり、継続的なたたかいの準備もできている。引き続き、力を入れていきたい。

 

首都圏青年ユニオンHP:首都圏青年ユニオン|労働問題ご相談ください。|日本 (seinen-u.org)

 

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【徳島】一時金も昇給も退職金もなかった職場で、労働組合をつくって交渉してみたら… #労働組合ができること JMITU徳島地本地域支部物産館分会

労働組合があったからまともな会社になった!従業員は全員が組合員

JMITU徳島地本地域支部物産館分会 

 

 コロナ禍で多くの業界が痛手を被りました。観光業界はその代表格とも言えるでしょう。JMITU徳島地本地域支部物産館分会も例に漏れず。徳島の名産品を取り揃える人気のおみやげ店です。

 

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徳島地本地域支部物産館分会の山田代表(写真右)と物産館の組合員のみなさん

 観光客減少により売上が例年の50~60%に落ち込みました。少しずつ、来客数は回復傾向にあるものの、いまだに週1~2日程、会社から休業指示が出されています。休業手当は100%保障、給与は下がっていないが、賃上げは2年ない状態です。

 

 さらに昨年の年末一時金はゼロという回答そこで売り上げを徹底的に見直し、4月、5月は従来通りかむしろアップしていたことが判明しました。コロナを理由にゼロにはできないと迫り、合計3回の交渉を経て、1か月の一時金を勝ち取りました

 

 そもそも、この物産館分会はセクハラ・パワハラの労働相談がきっかけで2006年に結成されています。当時、エスカレートするセクハラ被害に加え、全員が整理解雇寸前の状況からスタートしました。

 

 そして現在、何より驚くのが、従業員全6名(正社員4人、パート2人)、全従業員が組合員だということです。山田代表は新しい従業員が入社するたびに1時間ほどかけ、説明を行っています。自分の身にも起こりうるセクハラや解雇問題を組合が解決したこと。組合で要求を提出してはじめて賃上げや一時金・退職金要求を勝ち取ることができたこと。組合結成前と後で具体的に賃金がいくら違うのかなど、組合があったからまともな会社になったのだと必ず話しているそうです。丁寧に説明することで共感を得て、全員の組合加入につながっています。

 

 これは今までどんな理不尽な目にあい、組合として奮闘し、要求を勝ち取ってきたのか、その真剣さが伝わればこその結果です。組合結成時の話や経緯、歴史を伝えていくことで、いまの労働条件は当たり前のものではないことが分かります。また、職場で起きた労働問題が、他人事ではなく自分事として考えられることが、組合の存在意義をより強くしているのでしょう。

 

 山田代表は面接・採用にも携わったり、HPの立ち上げを行い、ネット注文を可能にするなど、雇用を守るために、経営を守ることにも力を入れています。組合の要求を通じて、経営者と労働者双方にとって良い方向に変化しているのです。

 

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この記事は「JMITU」(2022年1月10日発行)から転載しました。

 

 

【北海道】仕事の愚痴ばかり言っているのが嫌になり、はじめて自分で労働組合をつくってみたら、どうなった? #労働組合ができること 全日赤札幌血液センター労働組合

現場の声とパワーで変える!

コロナ禍にあっても道労連は声をあげ続け、いのちとくらしを守る訴えを広げてきました。しかし、職場の外に目を向けてみると、声をあげることすらできない状況が広がっています。そんな中、「声をあげなきゃ変わらない」と組合結成に立ち上がった全日赤札幌血液センター佐藤宏美執行委員長にお話を伺いました。

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全日赤札幌血液センター労働組合 佐藤宏美 執行委員長

 

三上(道労連 議長) 明けましておめでとうございます。

 

佐藤(全日赤札幌血液センター労働組合 執行委員長) おめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。

 

三上 コロナ感染対策が始まって2年たとうとしています。職場の状況はどうですか?

 

佐藤 私は看護師で、今は新札幌の献血ルームで採血業務をしています。 採血前後に献血者の体調観察など行い、安全・安心な献血を支える仕事です。コロナ禍でも血液は必要なので、安定供給と密をさけるために 「事前予約」してもらうことを呼びかけています。

 

労働者のパワーを集め、強く!

 

三上 佐藤さんの労働組合活動の原点はなんですか?

 

佐藤 「まじめに働いてるのに何故生活が苦しいんだ」という子どもの頃からからの疑問と怒りが私の組合活動の原点です。

 

三上 労働者が使い捨てにされていることへの怒りですね。

 

佐藤 経営者が豊かに暮らしているのは労働者が働いているおかげです。もっと労使が「対等」であるべきです。豊かな生活ができる賃金をもっと求めていいと思います。労働者だけが貯金もない、将来が不安という貧困に置かれているのは許せません

 

三上 佐藤さん自身が働いてみて感じたことは?

 

佐藤 以前いた職場がブラック職場で、周りを見ると看護師だけじゃなく職場全体がそんな状態でした。当時は労働組合が職場にあることも知らず、このままでは自分の方がダメになってしまう、と辞めざるを得ませんでした

 

三上 労働組合がないと労働者は圧倒的に弱いですね。

 

佐藤 賃金も働き方も労使の力関係で決まりますよね。じゃあ労働者もパワーを持てばいいんだ、そのパワーは連帯すること、団結すること、そして社会を巻き込む運動に変えていくこと、それしかないと気づいたんです。労働者ってもっと強いんだよ、対等だと、みんなにもっと知ってほしいなあって思います。労働組合もっと強くなんなきゃダメじゃん、というのが始まりなんです。1日8時間働いても貧困なんて許せません。

 

愚痴を言ってても変わらない!

 

三上 血液センターでの労働組合結成の経過について教えてください。

 

佐藤 組合結成前から人員不足で「年休が取りづらい」「時間外が多い」ことの改善を上司に訴えていました。でも、何も改善されませんでした。特に年休が取れないことへの不満が強く、仲間と居酒屋で愚痴を言う日々でした。転職して来た人が多い職場だからか、「イヤなら辞めれば」と言う人もいました。そんな時に、全日赤という組合があることを知り、相談メールで初めて労働組合とつながり、まず個人加盟しました。他の職場の話を聞いてすごく勉強になりましたが、自分の職場の改善は進みませんでした。

 

三上 転職は考えましたか?

 

佐藤 2カ所別の職場を経験していましたが、「辞めても一緒だな。医療業界にいる限り同じ問題がついてくる」と思いました。血液センターの仕事も好きだったので、辞めずにここを働きやすくするにはどうするかって考えたときに、「あっ、これはもう組合を作れということなんだ」と思いました。2019年9月に仲間3人で労働組合を立ち上げ、結成とほぼ同時に2人入ってくれ5人で活動をスタートしました。

 

すごく緊張! 組合結成

 

三上 職場を変わっても根本的には変わらない、組合が必要だと決断できたのは素晴らしいですね。労働組合への職場の反応は?

 

佐藤 いざ結成前はすごく緊張しました。「労働組合を理解してもらえるか」「応援して味方になってくれるか」など、今じゃ考えられないくらいアウェイな感じだったので、結成前日は「明日から職場で口きいてくれるかなあ」「穏やかな日は今日で最後かもね」なんて仲間と話していました。結成通知を出して、すぐに秋闘でボーナスの交渉と、組合事務所や掲示板の要求、年休の申請を断らないこと、人員配置増と、臨時職員の雇止め問題で団交しました。

 

三上 全日赤や道医労連、地区労連の仲間のサポートもあって、すぐに団交までできたんですね。要求は前進しましたか?

 

佐藤 労働組合で要求すると、年休申請を断られずに取れるようになりました「組合のおかげだ」「これだけやってくれてるから私も協力したい」という声も出され、自分たちの自信もUPしました。「あなたの力を貸してください。団交に参加してぜひ自分の言葉で経営陣に訴えてほしい」と話すと「入るわ」って言ってくださった方がいて、結成から2年間ですけど、労働組合の様子を見てくれた人は、確実に必要性をわかってくれています。

 

格差や使い捨ては許さない

 

三上 そのほかにも実現したことはありますか。

 

佐藤 臨時職員の一時金を正規の8割の率で支給させることを勝ち取りました。これまでの4倍に一時金が増額しました。2021年10月には臨時職員、パート職員の寒冷地手当の支給を勝ち取りました。さらに、臨時職員の5年雇い止め問題、各種手当や年休日数増など、非常勤職員の処遇改善を求めてたたかっています。

 

三上 すごいですね!なぜ実現したと思いますか?

 

佐藤 雇用形態がいくつもあって、同じ非正規でも一時金や寒冷地手当に大きな格差がありました。同一労働同一賃金の法改正を武器に、「なぜ同じ非正規職員なのに格差があるのか、冬が来るのはみんな一緒だ、暖を取らないと死んじゃうだろ」と追及し、1年かけて粘り強く交渉を続け、勝ち取りました

 

三上 5年雇止めルールはまだ残っているんですね。

 

佐藤 結成時に加入した臨時職員の方の時にすごい交渉したんです。でも、「難しい、前例を作りたくない、最初から5年契約となっている」と言われ、なかなかそこは明確にできませんでした。「雇用がなくなるくらいなら派遣にもどっていいですか?せめて無期雇用にしてほしい」という声まで届いています。人材の使い捨てだと思います。許せません。

 

三上 当事者である非正規労働者の方たちは組合に入ってくれていますか?

 

佐藤 雇い止め解消の道筋が見えないと当事者が声をあげるのは難しいと思うんです。たたかったけど結局雇い止めになりましたでは、なんのために組合に入ったのかとなってしまいます。

 

三上 5年雇止めルールが横行している職場では、ここが最大の要求であると同時に主体者になるための最大の課題ですね。

 

根本から変えるのは産別のたたかい

 

三上 今、日赤本社から提示されている成果主義賃金を導入する「Rプラン」撤回のたたかいも全日赤全体や医労連という産別での大きなたたかいが必要ですね。

 

佐藤 もし組合がなかったら、大変なことになってます。組合があって交渉できるということは一方的に強行させないことができます組合がなかったら「Rプラン」の情報すら全く入りません。導入の提案が2020年1月ですから、本当にすごいタイミングで組合を結成したな、あの時組合結成を決断してよかったと思います。

 

三上 職場内のたたかいだけで要求が実現できそうですか。

 

佐藤 やはり、企業内だけでは限界があります。日赤の中で交渉していて日赤がよくなるのはいいけれど、変えられる範囲はかなり狭くなってしまいます。医療は 診療報酬で収入が決められるので、そこを変えるのはやっぱり産別(産業別労働組合)じゃないとできないと思います。

 

三上 道労連は「いい○○」「めざすべき○○」というのをはっきりさせませんかと、産別に投げかけています。いい看護ってなんですか、そのために賃金ってどうあるべきですか、ということをはっきりさせ、どこの職場に行ってもこのルールが守られて、最低水準はこれですというものを作るのが産業別労働組合の役割だと考えています

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道労連 三上友衛 議長

佐藤 組合のない職場が圧倒的に多いし、ブラックな職場もたくさんあります。若い人に労働組合を知ってほしいです。なにかあったら組合に相談できる、セーフティネットなんだとわかっていない人が多い私も知らなかったし、まったく無知識で社会に出る人がほとんどです。そこをなんとかしたいですね。看護学校でも教えてほしいです。

 

熱く、そして楽しく

 

三上 組合員の拡大目標はありますか?

 

佐藤 まず2ケタにしたいです。アプローチしたい方が何人もいます。組合説明会がコロナ禍で開けないので、今は、職場で関係性を作っていく中で、個別に声をかけ、10月にも2名増えたんです。今日も会って話をしてきたんですが、「私も入るのは時間の問題かもしれません」と話してくれました。熱い方なので、「その熱い思いを団交に」と思っています。

 

三上 この人と決めて話をしてるんですね。職場では「佐藤さんは組合の人」と見られているのかな?どんなことに気を配っていますか。

 

佐藤 「組合の人」とみんな知っています。仕事をまずきちんとして、まわりのこともやっていかないと信頼は得られないと思います。自分にとって働きやすい職場は、相手にとっても働きやすいし、誰もが働きやすい環境を作るために、すごい神経を使ってます

 

三上 大変ではないですか。

 

佐藤 むしろ組合活動は楽しいです。組合への意見もどんどん言ってほしいです。意識して社会のことも話すようにしてます。TVで米軍への「思いやり予算」を取り上げていたら、「まず私たちを思いやってよ!」と話したり。選挙もそうですが、社会を変えていくことも大事な取り組みです。楽しく活動して職場を良くしていくのが大事だし、そのために組合活動をやる。働いてよかったなと思うのが一番で、つらくて辞めたい、でも組合活動やらなきゃでは絶対に続きませんよね。

 

三上 熱く、楽しく語る、ですね。団交でこの人に発言して欲しい、など組合員のパワーを活かそうとしていることもすごく大事だと思いました。

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失敗しても気にしない!前へ!

 

三上  最後に今年の抱負を。

 

佐藤 団交の絶妙な駆け引きがすごく楽しくて、好きなんですよ。交渉して交渉して1歩ずつ前進させてというのが好きなんです。楽しいんだよって知ってほしい。議論して要求をまとめあげていくことがこんなに楽しいのかって、知れて幸せだなって思います。失敗してもいいから行動してほしい。やっては失敗して、もっとこうしようって変えてやってきたから、これからも変わっていくし、そういうことをあきらめないでほしい。あきらめたらそこで終わりだし、楽しくない。札幌で組合員が2ケタ、3ケタになったら、要求も大きく前進するし、全国でも仲間がふえるんじゃないかなと思います。

 

三上  たくさんの学びがありました。一つは、現場の労働者としっかり対話する活動の大切さです。前進を勝ち取れたのは、要求が「本当に実現したい」要求になっているからで、「低賃金や格差をなくしたい」、という熱い対話が実を結んでいます。二つ目は、労働組合がない職場に労働組合を広げる必要性です。労働組合で交渉したら要求が実現した、労働組合のこうしたパワーをもっと知らせる必要性を実感しました。

最後に「楽しむ」ことの大切さです。組織拡大を、「力を発揮してほしい」という構えで呼びかけている点や、役員請負でなく「みんなの力で前進しよう」の構えが大事ですね。道労連は22春闘を、「どうせ無理」とあきらめから出発するのではなく、「どうすれば実現できるのか」の戦略づくりを重視したたたかいに挑戦しようと提案しています。一緒にがんばりましょう。

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北海道医労連のみなさんと

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※この記事は「みんなのユニオン 道労連ニュース 2022年新春号」(2022年1月6日発行)から転載しました。

あの日立で「追い出し部屋」から組合員を異動させ、追い出し部屋そのものを撤廃させた件 電機・情報ユニオン神奈川支部 #労働組合ができること

電機リストラとのたたかい

日立で人権侵害の「追い出し部屋」撤廃を目指してたたかった

電機・情報ユニオン神奈川支部 執行委員長 中村 由紀子


日立ICTビジネスサービスは、日立のリストラ施策の受け皿会社


 2020年11月、電機・情報ユニオンは日立関連子会社・日立ICTビジネスサービス(以下、日立BS)で働く女性労働者から相談を受け、会社に団体交渉を申し入れた。女性は1982年に日立製作所へ入社。2017年11月までの35年間、日立IT事業部門での営業事務のアシスタント業務をしてきた。2016年10月、20~30人いた所属部門の職場が丸ごと現在の日立BSに業務移管され、翌17年12月、現在の会社に移籍(転籍)となった。
 

移籍後も同様の職務(営業事務のアシスタント)であったが、18年10月、突然「日立エンジニアリングの派遣先で欠員が出た」という理由で配転命令が出され、同種の仕事をしてきた。


 しかし、元の職場に半年で戻され、上司からは「仕事のパフォーマンスが低い」「どうせ前の部署でも使えなかったんだ」「エクセルの勉強をするため、キャリアGに行ってもらう」と罵詈雑言を浴びせられ、2019年7月から日立BS総務管理本部人事勤労部キャリアグループに異動となった。

 

異動後の職場は「追い出し部屋」


 異動先のキャリア本部・キャリアサポート室という部署は、女性労働者によれば、彼女のように職場で余剰とされた人に「自己退職を勧める」いわゆる「追い出し部屋」で、絶えず十数人から二十数人が、自己研鑽を強要され、「マイナビ」や「産業雇用安定センター」の紹介で社外の職場を自分で探し、面接を受けさせられた。その際に「自分の仕事が縮小傾向にあるので、自分のスキルを活かして御社で貢献したい」と言うようにと言われ、再就職をして、次の職場を決める覚悟を示せと言わんばかりのことを強いられ続けた。面接に失敗すると、「自分に何が足りないのか、オファーがないのはどうしてだと思う」、「あなたには市場価値がない、他部署の人達からも『いらない』『いやだ』と言われている」、さらに、当社では「作業系(現業)の仕事しかない。事務の仕事をしたいのなら(辞めて)他で探すしかない」など侮辱され続けた。

 

電機・情報ユニオンのビラを見て相談に駆け込む


 日立関連の職場には、現場作業の仕事しかないと、片道2時近くかかる職場への異動を提示され、ようやく相談に駆け込みユニオンに加入した。団体交渉では、退職強要を止め、上司によるパワハラへの謝罪とスキルを活かした職務提示を求めた。さらに2021年3月に行われた共同での省庁要請で「追い出し部屋」の実態を告発した。

 

日立の株主総会で「人権侵害」を問い質す


 ユニオンの組合員でもある株主が、女性の職場で行われている退職強要の実態を日立に問い質した。会社役員から「再就職を強いるようなことはないと理解している」との回答を得、団交で問い質した結果、会社側は退職強要の事実を否定するかのごとく直ぐに、異動先を同じ日立BS内に提示すると約束した。4回目の団交で、女性は「追い出し部屋」から新たな職場へ異動となり、直後の10月1日付けでキャリアG・キャリアサポート室(追い出し部屋)は撤廃された。

 

電機・情報ユニオンホームページ:電機・情報ユニオン - 総合 (denki-joho.jp)

 

( 月刊全労連2022年2月号掲載 )

 

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【大阪】西日本で唯一の特定感染症指定医療機関「りんくう総合医療センター」の感染症センターで、未払い賃金を支払わせた件について #労働組合ができること

いのち守る災害拠点のたたかい 医療従事者に正当な対価を!そして、安心・安全の職場環境を

大阪自治労連 特別執行委員 荒田 功


 大阪・泉佐野市の地方独立行政法人であるりんくう総合医療センターは、大阪府の南の地域である泉州の広域医療を守る基幹病院であり、災害拠点病院です。


 ここの感染症センターは西日本で唯一の特定感染症指定医療機関(全国では4ヵ所)として、この間、コロナの感染拡大が収まらない大阪で、住民のいのちを守る最後の砦として大きな役割を果たしてきました。


 病院現場の状況について、りんくう総合医療センター労働組合常玄大輔委員長は「感染拡大の第4波、第5波では重症者を受け入れるために、昼夜を分かたず医療や看護を続けてきた」、「日々の感染リスクや病棟の再編などで、職員同士もピリピリしている」と話します。


未払い賃金の支払いと法令遵守を約束させた「勝利和解」


 コロナ感染拡大が始まる以前の2017年、総合医療センター当局は、財政難を理由に労働組合の合意なく賃金カットを強行しました。泉佐野市の財政悪化のツケを自分たちの賃金カットにされると分かった時に、これはおかしいと思いました。労使交渉は平行線となり、労基署も思うように動いてくれない。「いくら立派な医療をしていても、法を守らない病院に未来はない」と155人の組合員が裁判所に提訴しました。


 3年間の裁判闘争を経て、2021年5月20日に大阪地裁堺支部において、病院当局に未払い賃金の支払いと法令遵守の徹底を約束させる勝利和解を勝ち取りました。原告団の先頭に立ってたたかった、りんくう総合医療センター労働組合の常玄委員長は「お金の問題ではなく、献身的に働く医療労働者の実態を見ていただき、改善させたかった」と言います。


 また、裁判闘争の中で、「組合に入りたい」と加入した職員が多くあったことが嬉しかったと語りました。

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もっと安全に働ける職場環境をめざして


 一方で、36協定(労働時間の上限規制)について常玄委員長は「労働者代表として職場に説明してきたが、『職場がまわらない』『超勤ができない』と言われ、特別条項に合意せざるを得ず、本当につらかった」と現場の課題を話します。 労働環境を良くしたい。みんな仲良く働きたい。でも、その中で組合として病院当局に言わなければならないことがあります。


 引き続き、これからも職員が安心・安全に働ける環境にするため、一つでも要求を実現させていきたい、職場内ハラスメントや、困っている人を助け、目に見える組合活動を意識していきたいと決意を新たに奮闘しています。

( 月刊全労連2022年1月号掲載 )

 

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全労連議長の日記『ぱたちゃんが行く🦒』#トイレの話をしませんか 小畑 雅子(@zenrorengicho)

 

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 10月に開催された「はたらく女性の中央集会」の分科会で、「地方の配送業務では、途中でトイレがなく、生理の時に困る」という発言が、郵政ユニオンの組合員から出されました。私が、埼労連で女性部長をしていた2000年代の初頭に、埼玉の自交総連のタクシードライバーを中心にした女性組合員のお話を聞く機会がありました。その頃、女性のドライバーが少しずつ増えてきた時期で、会社や事務所そのものに女性用のトイレのないところもありました。また、郵政の配送の皆さんと同じで、タクシードライバーの皆さんにとってもトイレの問題は深刻で、トイレマップのようなものを作ったらどうだろうかと相談したことを記憶しています。はたらく女性が安心して使えるトイレの整備は重要な要求です。

 

深刻なトイレ問題を要求で克服


 私が教員になった1980年代には、学校でも、トイレの問題は深刻でした。職員用のトイレがなく、子どもたちのトイレを使っていた学校もありました。私の勤務していた学校では、男性教職員用のトイレはあるのに、女性教職員のトイレはなく半地下にある児童用のトイレでした。そこは、あまり子どもたちが使わないからという理由だったように思いますが、釈然としません。しかも、中に入ると男女別のトイレなのですが、入り口は一つでした。分会として、女性用も含めて職員用トイレを整備すること、児童用のトイレの入り口を男女別にすることを要求し続けて、学校の改修に伴って、職員用トイレも児童用トイレも整備されたと記憶しています。


 全教女性部では、毎年文科省に対して、「文部科学省の学校施設整備指針や厚生労働省の快適職場指針の全面実施に向けて指導を強めること」とした上で、「すべての学校に、教職員用男女別トイレ・更衣室・休憩室・休養室を設置すること。また、設置状況について調査すること」を要請してきました。現在では、もちろん教職員用の男女別トイレの整備は、ほぼ100%になっていますが、整備指針にもとづいた配置を意識づけるために、要請書には掲げ続けています。さらに近年では、ジェンダー平等の観点から、「児童・生徒・教職員の性自認等のプライバシー保護に配慮した、トイレ・更衣室の設置を検討し整備すること」も要請項目に付け加えています。

 

コストを削減したい 使用者側意見の法令案


 職場のトイレの問題は、労働安全衛生法に基づき、事務所衛生基準にその定めがあります。厚生労働省は、この間、「事務所衛生基準のあり方に関する検討会」を立ち上げ、「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案の見直し」作業をすすめてきました。見直しの議論そのものは、2018年6月の働き方改革関連法成立の際の付帯決議において、「事務所その他の作業場における労働者の休養、清潔保持等の事業者が講ずるべき必要な措置について、労働者のニーズを把握しつつ、事務所則等の必要な見直しを検討する」ように求められたことを受けたことの対応とされています。しかし、検討会において、使用者側委員からは、「現実に即して見直せるものは見直す」という姿勢で、既存の規則が守られていない実態に法令をあわせ、コスト削減の視点から規制緩和を求める意見が出されました。これらの意見を受けて、7月28日に出された「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案概要」において、便所の設置基準について「男性用と女性用に区別して設けることが原則であること」とした基本方針はおいたまま、「少人数の事務所における例外」として、「同時に就業する労働者が常時十人以内である場合は、現行で求めている、便所を男性用と女性用に区別することの例外として、独立個室型の便所を設けることで足りることとすること」との案が示されました。

 

全ての人が安全で衛生的に、安心して利用できるトイレの設置へ


 これに対して、全労連は、省令案が、ILO120号勧告(5人以内もしくは家族従事者のみ許容)にも悖る提案であることを指摘した上で、男女別のトイレを要求する労働者の声を踏まえず、事業主のコスト削減論を軸に規則を見直すことは認められないと批判する意見書を厚生労働省に提出しました。合わせて、ジェンダー平等の観点から、男女別に加えて、独立個室型便房を置くことなど、事務所衛生基準規則に位置づけ、普及促進をはかるべきであることも意見書では触れました。


 10月11日に開催された労働政策審議会安全衛生分科会では、パブコメに寄せられた1542件の多くが、この改定に反対・懸念・不安を述べるものであったことが報告されました。また、労働者側の連合の委員からも懸念が示されましたが、「省令案」は概ね妥当との答申が審議会として答申されました。現在、厚生労働省において、12月上旬の施行に向けて、省令の改正が進められています。


 先ほど触れたILO120号勧告は1964年に出されたものですが、トイレについて「衛生施設」の項で、「労働者の使用のため、十分かつ適当な衛生施設を適当な場所に設け、かつ、適正に維持すべきである」としたうえで、「衛生施設には、十分なプライバシーを確保するように仕切りを設けるべきである」とも定めています。トイレは、私たちが生きていく上で、必要不可欠な場所です。その重要な場所が、すべての労働者にとって、安全で衛生的で、そして安心していつでも気兼ねなく使える場所であることが求められています。今回の事務所衛生基準の改定が、それと逆行するものとならないように、労働組合として、職場の要求に根差して、常に注視していかなければならないと思っています。


 同時に、これを機会に、もっとトイレのあるべき姿について話してみることも提案したいと思います。例えば、ある時「なぜ男性の小便器は個室ではないのか」という話になったことがあります。ぜひ、男性の意見も伺ってみたいです。そして、全教女性部の要求書や全労連の意見書でも触れた性自認等のプライバシー保護に配慮したトイレ」の在り方も議論する必要があります。誰にとっても、衛生的でプライバシーが守られ、安全で安心して過ごせるトイレについて、話してみませんか。

 

( 月刊全労連2022年1月号掲載 )

 

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あの「ハードオフ」で労働組合が誕生!組合内のやり取りはLINE!!経営者との交渉はZoom!!基本給とボーナスUP、時短、特別・慶弔休暇、パートの有給が次々と実現!!! #労働組合ができること

仲間と一緒に要求前進!「労働分配率を改める気はない」社長の言葉への怒りを結集 賃上げや休日増を勝ち取る!!

 

全労連・全国一般埼玉地本 大宮電化支部  

 

 大宮電化は、リサイクルショップハードオフフランチャイズ加盟し、埼玉県を中心に64店舗を展開しています。正社員・契約社員は約150人うち110人が大宮電化支部に加入パートやアルバイトなども含め約120人が組合員です。

 

 組合結成の中心となったのは、店舗の店長を束ねる立場のエリア長たち。同社では待遇の悪さに若い社員が次々と辞めてしまっていました。それを社長に伝えたこともあります。

「でも、経営陣には危機感が全くなかった。社長にも待遇改善を訴えたが、『労働分配率を改める気はない』と明言され、もう組合をつくるしかないと思った」と田中書記長は振り返ります。

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大宮電化支部の主要メンバーは、30~40代が中心

店長を集めて呼びかけその場でほぼ全員加入

 田中書記長や藤巻委員長など、中心メンバーで全国一般に相談。組合づくりの基本を学び、2020年8月31日に結成しました。同日、エリアごとに店長を集め、労働組合をつくった。みんな加入してほしい」と呼びかけたところ、ほぼ全員が加入したといいます。

 

 高い組織率を背景として翌9月に団体交渉を開始。途中、冬の一時金交渉もあり、妥結したのは21春闘でしたが、基本給アップ、一時金の改善、勤務時間短縮、特別休暇・慶弔休暇制度、パートの有給休暇取得で差別撤廃などを勝ち取りました。「社員たちから、『改善された』『ありがとう』と言ってもらえて、うれしかった」(田中書記長)。

 

デジタル技術をフル活用 スト権もパワポで解説

 

 組合結成がコロナ禍の最中だったこともあり、活動の中心はオンラインです。「交渉の様子を生中継したこともある。現在も交渉は録音して共有している」。Zoomでの団体交渉報告会には50人ほどの参加がありました。

 

 21春闘ではスト権を確立しました。スト権についてもパワーポイントで資料をつくり、オンラインの会議で説明しました。連絡は基本的にL I N E 組合費もLINEペイで払うことができます。組合員の声もオンラインでアンケートを取り、その内容を団体交渉で伝えています。活動スタイルは今風ですが、組合運営の姿勢は極めて原則的です。

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スト権を確立し、賃金やパートの待遇差別撤廃などで改善を実現

 

 結成から1年半近くが経ち、現在の課題は、さらなる賃金アップと組合の継続です。「一部の役員に負担がかかるやり方では長続きしない。楽に活動していけるよう工夫したい