月刊全労連・全労連新聞 編集部

主に全労連の月刊誌「月刊全労連」、月刊紙「全労連新聞」の記事を紹介していきます。

【三重】非正規外国人労働者が労働組合を結成して交渉してみたら…。組合員は全員準社員に!時給制→月給制に!ボーナス・退職金・扶養手当、特別休暇ナシ→アリに!#労働組合ができること

非正規外国人労働者の処遇改善にむけて コロナ禍のなか春闘で要求実現を

みえ労連・中勢地域労働組合亀山日東電工一般支部

支部長 井伊 博之 ミルトン

 

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 私がブラジルから日本に渡り、三重県亀山市にある日東電工亀山工場で仕事を始めてから今年で21年目になる。当時から仕事は忙しく、月80時間以上の残業は珍しくなかった。その間、劇薬を扱い健康被害を受けて仕方なく帰国した人もいる。リーマンショック後は仕事量が減り、会社から賃金や待遇をカットされた。その当時マイホームを購入した人たちは、ローンの返済ができなくなり、念願のマイホームを手放す事例が次々とでてきた。私もダブルワークをしながら生活とローン返済で両立していた。

 

《会社を交渉の席に座らせるために労働組合を結成》

 

 私たち外国人労働者は2010年、会社の下請け会社の派遣社員から直接雇用(有期契約)労働者に切り替わった。偽装派遣対策だ。その頃、各職場のリーダー的ブラジル人労働者が製造部の責任者に話し合いの場を要求し、苦しい生活実態を訴えたが、1年経っても回答はなかった。既存の労働組合への加入も正社員以外入れないと断られた。このままだと労働環境や賃金の改善はできない。まわりのブラジル人労働者に悩みを打ち明けると、同じ様に悩んでいることを知り、正規雇用労働者の組合を立ち上げることにした。

 

 調べると津市にある地域組合・中勢地域労働組合がある事を知り、相談に行き、実態を話し、問題点や指導を受けた。そして、あっと言う間に組合結成へ話がすすんだのである。

 組合結成の決心から準備期間を経て2012年3月に80人の仲間を集め、結成した。翌月に公然化し、大阪本社と亀山事業所に要求書を提出した。

 しかし、これまでの春闘は誠意の無いままだった。交渉が難航すると会社側は常に「不満があれば裁判しかない」と繰り返し言ってくる。社内の労使協議会でも会社側の代表者が大声で「不満があれば裁判しろ」と怒鳴ることもあった。

 

《そして裁判へ》

 

 私たちも限界だった。仲間から「会社の希望通りに裁判しよう」「生活もかかっているからこれ以上待てない」の声があり、ついに裁判闘争に踏み切った。

 それから今までの丸8年の活動は、決して平坦な道なりでなかった。わからない法律や会社側からの団体交渉拒否もあったが、重要な成果もあった。男女賃金差別解決は会社内にとどまらず、地域の企業にも広がった

 

《長年の頑張りが実り、一気に数々の待遇改善へ!》

 

 裁判闘争がプレッシャーになったのか、今春闘コロナウイルスが猛威を振るう中、長年の要求を一気に勝ち取った。組合員は全員準社員になった。時給制が月給制に。支給のなかった賞与・退職金・扶養手当支給になり、特別休暇やリザーブ年休の付与、夜勤手当のランク格上げ福祉基金への加入などなど。

 

 この国では、外国人労働者問題は増える一方だ。また、非正規雇用労働者は4割以上になる。そのような中、私たちのような非正規雇用外国人労働者の組合の歩みが、他の労働組合を勇気づけ、モチベーションになる。そのような貢献できれば幸いだ。

 

( 月刊全労連2020年8月号掲載 )

 

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【神奈川】新型コロナで「定期昇給」なし!?納得できない医療従事者が労働組合に加入→団体交渉→定期昇給を勝ち取る→職場に自分たちの組合を作るまで!#労働組合ができること

 

誰もが安心して働ける職場をめざして ─めぐみ在宅クリニック労働組合─ 神奈川県医労連 書記長 柏木 哲哉

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 2020年10月16日、横浜市内にある在宅医療を専門とする個人経営の事業所「めぐみ在宅クリニック」で、労働組合が結成されました。組合員数は13人で医師・看護師・事務職の医療労働者を中心に組織をしています。

 

《院長の独断運営により職場が振り回され、コロナを理由に定昇なし》

 

 当事業所は個人経営の典型である院長の理不尽な人事・経理運営で、職員が常に振り回される職場環境が長年続いてきました。また、患者とのトラブルも発生し、職員がフォローする状況でした。さらに、スタッフとの信頼関係を全く築けていません。そして、今回のコロナ禍での収益ダメージを理由として定期昇給見送り夏期一時金削減などを、職員に対して一切の説明をすることなく強行しました。院長に何度も不利益変更をした説明を求めても「いつか説明します」と言いながら、ずっと私たちから逃げ続けてきました。

 

《神奈川県医労連を訪れ団体交渉をスタート》

 

 院長の身勝手な行動や一方的な削減などに耐えられなくなり、職員3人が労働相談として神奈川県医労連を訪ました。早速、ひとりでも加入できる医労連個人加盟労組へ加入団体交渉を申し入れ、院長との交渉が実施されました。院長は交渉の中で「職員との信頼関係が築けないので、院長職を降りて自由になりたい」と身勝手すぎる発言に終始しました。一方で「経理関係については信頼関係がある家族(嫁・娘)が担っているので問題ない」とお金に係る部分は握って離さない姿勢が露わになり、院長に対する不信感は一層高まりました。

 

《交渉の中で要求が実現》

 

 煮え切らない院長との協議を続けてきましたが、交渉を進める中で定期昇給見送りを撤回させ4月まで遡って支払わせる事を勝ち取ったり、経営状況を明らかにさせたり、物事の決定は院長独断ではなく職員とキチンと協議する事を約束させるなど、一定の効果がありました(職責者会議や医局会議、経営部門会議を開設させることを約束し実施しています)。

 その後、当該組合員は「組織対組織」での団体交渉等を通じて職場環境の改善を更に発展させるため、なかまを増やして力を高めていこうと、職場内で一気に13人も拡大をしました。そして、院長に責任ある行動を取らせるために集団化することを決めて、労働組合を結成することを確認し、10月16日に結成大会を開きました。

 これから賃金や年末一時金、人員増やコロナ対策の課題等も併せて、本格的なたたかいを展開し、誰もが安心して働ける職場をめざしていきます。最初の活動として組合員から実態アンケートを集め、要求にして団体交渉を開きつつ、過半数組合の達成のため組織拡大にも力を入れていきます。

 

(月刊全労連2021年2月号掲載)

 

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【兵庫】国際学校で突然理事と校長が解任!動揺と不安が広がる中、教職員たちがとった行動は「労働組合を結成すること」だった!#労働組合ができること

組合を作って職場の雰囲気が一変! 教職員たちがマリスト国際学校に労働組合を結成

兵庫私学労働組合マリスト国際学校分会 分会通訳兼リエゾン ラニー美緒

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 学校法人マリスト国際学校では2020年春、理事の解任、複数の評議員の退任、PTA会長の退任など、不穏な動きが相次いだ。新学期を3週間後に控えた7月末、教職員に何の前触れもなく、校長が突然解雇された。教職員の間には不安と動揺が広がり、校長不在の中、約40人の教職員が仕事を分担し、手探りで新学期の準備を始めた。

 その1週間後、理事会が教職員の質問に答えるオンライン会議があったが、理事の1人が文面を読み上げるのみで、「秘匿情報」を理由に何の説明もされなかった

 校長は正当な手続きを経て解雇 注)されたのか? 私たちの無期転換契約とはどのような意味を持つのか? という疑問に、理事会からの回答はなかった。そんな時、数人の教職員から「労働組合を結成しようという声があがった。

注)2018年に無期契約に転換されたが、なぜか委任契約の期間満了とされ事実上の解雇。

 

《なぜ、兵庫私教連だったのか》

 

 欧米の国々での労働組合の経験が豊富な教職員はいても、日本の労働組合について知識がある者は皆無であった。新聞記者・学校関係者・組合経験者などから聞き取りをしたり、インターネットの組合サイトを比較したりと、リサーチを続けた。結果、大きな組織より、その地域について、また学校について知っているローカルに根付いた組合の方が信頼関係が築きやすいという結論に行き着いた。さらに、ある人のひと言で兵庫私教連への加入を決断した。それは兵庫私教連と団体交渉をしたある学校の元管理職が、「あそこは手強かった。彼らは法律を知り尽くしている」と言ったことであった。その人は、さまざまな組合と交渉をしてきた中で、兵庫私教連で団体交渉をした時には「ほとんどの(要求を)のまなければならず、大変だった」と漏らしておりそれはまさに、私たちが探していた組合だと確信した。

 そうして私たちは私教連のドアをたたいた。話を聞いてほしい思いでいっぱいであった。応対者はそんな私たちの突撃訪問を温かく受け入れてくれた。その後、夏休みを返上しての取り組みで、1ヵ月後には32人が加入する組合を設立することができた。

 

 夏休み中には、組合の話をする際には隠れるように声をひそめて会話をしていたなかまたちが、今では大きな声で、時おり冗談を言いながら話をしている姿を目の当たりにするようになった。

 賃金のこと、そのほかの労働条件のことなど教職員の不安や疑問を積極的に話し合う雰囲気へと、職場は大きく変化した。

 

 海外から来日した教師陣の多くは長くここに住み、この須磨の地を第二の故郷のように大切に想い、子どもたちをマリストで教育している。

 私たち教職員は強い絆で結ばれ、学校のために、また地域社会のために貢献し、将来を見据えてより健全な学校を築いていくことを念頭に活動していきたいと思う。

 

(月刊全労連2021年3月号掲載)

 

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【岩手】#労働組合ができること 中小企業の社長が労働組合に加入? 一体なぜそんなことに?! 労働相談からはじまったストーリー いわて労連議長 金野 耕治

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《なぜ中小企業の社長が労働組合に?》

 

5月26日、いわて労連に一本の電話。とある下請け会社(A社)の社長からで「元請け(B社)に乗っ取られそうだ。従業員を守りたいので労働組合を作りたい」という内容だった。翌日、A社を訪問して事情を伺うと、B社が直結の子会社(C社)を設立して、A社など下請け3社を吸収しようとしているとのこと。6月1日から採用面接を始めて、7月1日にはC社に採用する計画だ。このA社は、社長は77歳だが、従業員は78歳、72歳、68歳の大ベテランから今年の新規採用まで幅広い。なぜ、70歳過ぎの従業員を雇用しているのかと尋ねると、社長曰く、「うちに定年はない。退職は本人が決めることだ。体力があれば何歳でも雇用する。会社創立時から一緒に働いてきた仲間だ」。まさに経営者魂を見せつけられた。しかし、その会社創立時から一緒に働いてきた仲間は、今回の移籍によって社長共々当然のように除外される人たちだ。

 

 労働組合は、従業員の雇用や労働条件については団体交渉で解決できるが、会社と会社との売買契約に口が挟めるだろうか? 移籍する従業員の本音はどうだろうかと思い、アンケートを取った。A社での継続雇用を望みつつも、失業は避けたいので転籍はやむなし、との声が大半だった。当労連の顧問弁護士S先生は、「正式な事業譲渡なら交渉の余地があるが、ただのつまみ食いなら個別の価格交渉しかできない」とのこと。「よし、ここは一か八かだ!」と、社長にローカルユニオンに入ってもらい、半世紀にわたって営んできたA社を丸ごと買収してもらう代金として1億円、従業員には1人100万円ずつ(退職者には慰労金として、移籍者には支度金として同額を)出すよう要求書を作成した。社長のほか年長者4人にも組合に加入してもらい、要求書をB社本部に郵送すると同時に、B社の盛岡支店長T氏に電話で事前通告。素っ気ない返事のT氏だったが、その後、A社社長の所に押しかけてきた

 

《見事に企業乗っ取りを阻止!》

 

 要求書が相手側に届いて2日後の6月11日、T支店長ら2人が早朝、A社社長を訪ねてきた。手のひらを返したようにニコニコしながら「このまま今の会社を続けてほしい」と伝え、後日、従業員を集めて「計画は白紙に戻すので今まで通りやって頂きたい」と謝罪した。当労連には6月15日、本社社長名で以下の通り文書回答があった。

 

「事業譲渡についてはまだ計画途中で決定しておらず完成していない。今後の趨勢により実現には至らない可能性も多々あるので現段階での交渉になじまない。ご要望に添うことは困難ですので事情斟酌ご理解頂きたい」と。

 

 T支店長に電話確認すると、前回とは打って変わって、平身低頭で「大変ご迷惑をおかけしました。合意に至らなかったので白紙撤回します。他の2社も白紙撤回です。採用内定の取り消しはすでに個人宛に昨日発送しました」とのこと。A社社長は、「B社が完全に手を引くかどうか信用はできないが、今回はいわて労連さんに助けられた」と喜びの声。従業員には、「事業譲渡が白紙撤回され、転籍も取り消しになったので引き続き働いてほしい」と朝礼で伝達した。今度、従業員とローカルユニオンやいわて労連事務局みんなで祝杯を上げる計画になっているので、三密を避けながら、ともに美酒を味わいたい。

 

全労連無料労働相談ホットラインを開設しています。職場で働くことで困ったことがある方は、お気軽にお電話ください。自動的に最寄りの相談所に繋がります。電話:0120-378-060 (平日10時~17時)

※3/2には同じ電話番号で全国一斉コロナ労働相談ホットラインを開設します

 

(月刊全労連2020年9月号掲載)

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ジェンダー平等へ 労働組合が変わる、変える。初の女性議長に就任した全労連・小畑雅子さんと、女性委員長として活躍中の新聞労連・吉永磨美さんによるトップ対談です。

 

  昨年7月に全労連議長に就任した小畑雅子さん。日本の労働組合ナショナルセンターで初めての女性の議長だ。新聞労連でも吉永磨美さんが2人目の女性委員長として活躍中。目を覆うばかりの日本のジェンダーギャップ指数を見ても、ジェンダー平等社会に向けて労働組合が果たす役割は大きい。2人が労働組合におけるジェンダー平等の課題について話し合った。

 

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吉永 磨美さん (左)

 日本新聞労働組合連合中央執行委員長日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)議長(2020年9月~)98年から毎日新聞記者。教育、ジェンダー、福祉、情報公開などを取材し、労働組合ではメディアのセクハラ問題の改善に向けて運動を展開してきた。

 小畑 雅子さん (右)

 埼玉県浦和市(現在さいたま市)生まれ。埼玉大学教育学部卒。同県志木市の公立小学校勤務を経て2002年に埼玉県教職員組合(埼教組)の専従に。15年全教書記長、19年委員長を経て、20年7月の全労連第30回定期大会で全労連議長に就任。

 

《自分事としての語り 労働組合の取り組みに》

 

小畑 ジェンダー平等を求める声は高まっています。労働組合の中でジェンダー平等を進めることは、労働組合が社会的役割を果たす意味でも重要だと思っています。新聞労連の中で女性の参画を進めるために特別執行委員制度を創設した話を伺いました。どういう経緯で始められましたか。

 

吉永 私は毎日新聞の組合の専従役員を2017年9月から1年間やっていました。当時、「#MeToo」運動が世界で巻き起こり、伊藤詩織さんの事件も記者会見され、にわかにマスコミ界隈、新聞記者の中で、「#MeToo」の問題に意識が高まっていた。そういう中で、「自らの被害を原稿に書きたい」という声があがり、組合内でも問題があることが認識されつつあった。新聞労連の機関紙で18年4月開催の女性集会前に座談会を特集し、過去のセクハラ被害や、それを語れない状況を報じた。あれが労働組合が当事者の声をとりあげ始めた最初だったと思う。

 機関紙が出たあとに、元財務次官による取材記者へのセクハラが明るみに。当時の委員長から声明を出す提案があった。それまでの声明は中執の男性中心に作成されていましたが、私たちの現場の女性組合員の声を吸い上げて声明文はできました。声明文はかなり評判がよくて、勇気づけられたという声が上がった。

 そして開催した女性集会では、セクハラを含むジェンダー格差の問題を解決するにはどうすればいいのかをグループごとに議論しました。その結果、解決策として出てきたのが意思決定機関における女性の登用でした。となれば私たち自身が意思決定機関へ入っていかなければ、という結論に至りました。

 

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小畑 それはやはりみなさんの要求の中から出てきたそこが強いなと思う。女性3割とか理念だけでなく、自分たちの要求を実現するためには、自分たちの声が届くような仕組みがなければ実現しない。そこが大きな強みですね。

 私は教職員組合出身ですが、小学校は8割近くを女性が占め、女性にとって働きやすい場であったと思う。しかし、高校現場は女性が少ない。産育休、介護休暇が当たり前の文化ではないので女性の離職率が全然違います。そういう状況を変えることと、長時間労働の問題がある。女性が働きづらい職場は男性も働きづらいわけですから、みんなで一緒に変えていくために、女性が意思決定の場に入り、声を反映させる。職場の女性の声を受け止め、労働組合の中に声を反映させるサイクルをつくれるかがすごく重要だと改めて思いました。

 

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吉永 18年7月の定期大会前の中央執行委員会でも運動方針案にあった女性役員3割にする目標については賛否を含めて、いろんな意見が出ました。女性集会で訴えた3人も含め、その場にこなかった女性組合員の意見をメッセージとして代読し最終的に全会一致で承認されました。やはり当事者の声は大きい。

 労連内のジェンダー格差を是正するため、翌年1月の臨時大会で、女性の中執を3割超にするため、女性の特別中央執行委員制度を創設しました。特別中執は立候補で公募になりました。画期的だったのは年齢も背景もさまざまな女性が入っていることです。

 

《共通する生きづらさの解消をめざして》

 

小畑 特別中執の制度が始まったことで、どのような変化が新聞労連の中に表れたのでしょうか。

 

吉永 特別中執独自の活動もあえてやっています。長崎での女性集会では、取材中にあった長崎の性暴力事件のシンポジウムもやり、長崎の女性と連帯したフラワーデモも企画しました。独自の活動で、労連全体にメッセージが届けられ、メディアの労組のこういう動きは社会的にも影響があると思う。単組でも女性の委員長、書記長が誕生しています。執行部の中心的役割を出産後2、3年の子育て中の方が引き受けることで、私もという広がりを感じています。もうひとつの影響は、女性だけではなく男性にも浸透をしてきたこと。男性の育児休暇問題、仕事と子育ての両立問題、介護の問題など要求づくりも活発化しています。

 男性組合員対象のアンケートでは「職場で男性として生きづらさを感じますか」という質問に「感じる」という回答が3割あった。ジェンダーや生きづらさという言葉が、男性の方にも受け止められてきている。男女共通の問題として、今後取り組める段階まできている実感はあります。

 

《女性が意思決定の場に》

 

小畑 ジェンダー平等が実現したらみんながもっと多様性を認められ、生きやすい社会になりますよね。女性が意思決定の場に入ることの重要性の議論が進む一方で、仕事と生活の両立だけでも忙しく組合まではという声も根強い。両立させていくには組合の活動スタイルも変えなければいけないですよね。

 

吉永 組合は労働者の団体ですから、われわれ自身が主役であるべきで、私たちが活躍できなくて誰が活躍するのかという場所だと思う。魅力ある労働組合活動で要求実現できるとなれば、参加したいという気持ちに変わる。その人任せにせず、周りがいっしょに参加できるように変える。

 これだけ多様性やジェンダーとか言われていて、生活条件によって組合にかかわれないではダメだと思う。子育て、介護中の人のように時間に制約があると、夜とか長時間の拘束は無理です。例えば夜間の飲み会があるから無理だとか、あるいは深夜、早朝の活動をしないといっぱしの組合員ではないなどという、そういう考えや価値観を払拭する

 特別中執制度について話し合う中で、「オンライン参加も可能に」という提案をしました。制約がある人が排除されない仕組みを最初に整える。コロナ禍で労働者にとってはマイナスばかりですが、わずかによかったのは会議のオンライン化で参加の機会が広がったこと。子育て中でも積極的に単組の組合の執行部を引き受けるという事例が出てきています。参加したいのにできないという人を排除していくと活動が先細りし、一部の人のための労働組合になってしまう。そうなると必ず労働者の声も一部の人だけの声になってしまい、社会的影響も弱まる。私たち自身がそこを工夫して維持して、持続可能な形をつくっていかなければいけない

 

小畑 私が教員になった頃の組合の活動のスタイルは、男女問わず小さな子どもがいる方たちばかりだったので、公民館の畳の部屋を借りて子ども連れでした。みんながみんなの子どもをみながら会議をし、子育て中の人も来るのが当たり前の形をつくっていた。

 その後教員の採用減で、子育て世代が抜けた時期がありましたが、今は若い方たちが入ってきて活動スタイルを変える取り組みが全国で起こっています。多様で柔軟な方法で組合員の要求を吸い上げる形が広がりつつあると思いますね。

 

吉永 私も思いますし、組合は意識しなければならないと思う。制度づくりや場づくりもあえてやっていき、伝え、見せていく。そのことが各単組や社会にも影響していくと思います。

 

小畑 そこで果たす労働組合の役割は大きいですね。

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小畑 全労連女性部の調査で、ハラスメントをだれにも相談できず一人で耐えた人が4人に1人表1)。相談しても解決したのは4人に1人表2)でした。相談窓口を作らせるとともに、被害者の立場に立った問題解決が必要です。

 私たちはハラスメントのない職場づくりとともに、国に対して包括的差別禁止とハラスメント禁止法の制定を求めています。

 

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ジェンダーギャップ指数

世界経済フォーラムが2019年12月、「Global Gender Gap Report 2020」を公表し、その中で、各国における男女格差を測るジェンダーギャップ指数を発表した。この指数は、経済、政治、教育、健康の4つの分野のデータから作成され、0が完全不平等、1が完全平等を示している。2020年の日本の総合スコアは0.652、順位は153か国中121位(前回は149か国中110位)だった。
※「#Me Too」運動
「#Me Too」とは、性的嫌がらせなどの被害体験をSNSで、告白や共有する際に使用されるハッシュタグのこと。「#Me Too」運動の始まりは2017年10月に、アメリカのハリウッドの映画プロデューサーによるセクハラ疑惑が報じられ、女優のアリッサ・ミラノさんが同じようなセクハラ被害を受けた女性たちに“me too”と声を上げるよう呼びかけたことで始まった運動とされる。

 

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《メディアはなくてはならない存在》

 

小畑 今、メディアの役割が重要になっていると思っていますが、メディア本来の役割を発揮できるように、それを支える労働組合の役割について考えていることをお聞かせください。

 

吉永 今、日本の新聞、メディア業界で労働組合の立場は、現場で働く記者などにとっては非常に大事な存在だと思っています。また、新聞労連労働組合でもありながら、職能団体の役割を果たしているところもある。自由なメディアは、社会において明確な役割があると思います。なんとなくではなくて、なくてはならない存在。とくにSNSが発達していわゆるフェイクが氾濫する中で、確実にしっかりとした情報を伝えるメディアの役割は大きくなっていると思います。

 

《民主主義を支える議論の場作りと権力監視》

 

吉永 さらに言えば、信頼をより求められてくる時代に入ってきています。私たち自身の信頼性が問われています。さらにその信頼をもとに、多様な情報、ものの見方、考え方を伝え、多くの人が参加できる議論の場を提供する。その議論がなくなると民主主義の場はなくなります。私たちはそこに寄与する存在だと思っています。正しい情報、さまざまな考え方を伝えるということが、まずメディアの役割としてあります。

 権力はやはり増長していくものであることを私たちは身をもって感じています。それはどの政権であろうと、権力はそうなってしまうし、なりがちなものです。モノの見方、間違ったことやおかしなこと、疑問があるところがあればしっかりと指摘していく。権力管理、監視の役割を私たちメディアが果たしていく。その意識でいかなければいけないと思います。

 そのメディアとしての意識をもってちゃんと働いている、がんばっている記者やジャーナリスト、もしくはそれを支えている新聞社やメディアに働く人たちをしっかり守っていかなければいけない立場だと思っています。

 多くの記者はメディアが果たす役割に自覚をもって働いています。ちゃんとした形で伝えていこうとがんばっている記者を応援してほしい。

 そして、メディアがなくなれば何が起きるのかを考えていただきたい。そういう意味でも労働組合としては、経営監視をしっかりしていく。それとともに安心・安全な働く職場を確保していくことを常に要求しつづけていくことも役割としてあると考えています。

 

小畑 私たち報道を見ていると、もう少しこんなふうに報道してくれたらいいのにと思うことはあります。マスコミがこんなだから…というふうに言いがちなところがあります。私たちはメディアの役割を発揮しようとがんばっているみなさんを励ましていく。要望があるからこそ余計にいっしょにつくっていくことが重要だと思っています。

 

《当事者が前に出て変える》

 

吉永 以前に比べて、働き方の話はクローズアップされているし、労働組合が記者会見をやったり、労働関係の裁判も取り上げられたりするようにはなっています。当事者の声が前に出る形であれば、メディアも取り上げやすいし、視聴者、あるいは読者も共鳴しやすい。労組も当事者目線を非常に大事にしていただけると私たちもそれを活字にできると思います。

 

小畑 会議に女性がいると会議に参加しやすいし、発言もできます。

 

吉永 私が新聞労連委員長なった理由に、「私でもできるよ」と思ってもらいたかったことがあります。新聞労連は明珍美紀さん以降誰も女性委員長がいなかった。これを打破して、ここからの流れは男、女、男、女で。そういうことが当たり前になるきっかけに自分はなりたいと思った。

 ずっと子育てしながら記者をしてきたのです。そういう人間でもやれるという証明をしたい当事者が意思決定機関にいれば、変えましょうと言えます。まずそこを自分がやりたいという思いがありました。

 

小畑 ありがとうございました。

 

(全労連新聞第534号 2021年1月15日 掲載)

 

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どうなるアメリカの #最低賃金? バイデン新政権と米国の労働運動の課題 全労連国際局長 布施 恵輔

 

 

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SEIU Essential rally

 アメリカのバイデン新政権は果たして最低賃金 時給15ドル」を実現できるのか?その中で、実現にむけて労働組合が果たしている役割について解説します。 

 

 1月20日、米国でバイデン大統領が宣誓式を行い、トランプ政権からの政権交代が実現しました。1月6日にトランプ支持者が連邦議会に乱入して暴動騒ぎを起こし、米国の民主主義が危機に立たされる中での就任となりました。

 気候変動に関するパリ協定への復帰や世界保健機関(WHO)への脱退の取り消しなどを進める大統領令に、就任初日に署名したことは、日本でも報道されました。そしてコロナウイルスワクチン開発に各国が共同出資・購入する枠組み「COVAX(コバックス)」への参加も表明。コロナ対策において途上国と共にあることを宣言したとも言えます。

 また、連邦政府の職員、委託の職員を含めた全ての職員の賃金を時給15ドル以上とする大統領令にも署名しています。連邦政府のいわゆる公契約に当たる職員を含め、選挙期間中から訴えてきた時給15ドル以上の最低賃金の実現を、足元から実施したものです。バイデン大統領は多くの労働組合の支援を受けた民主党の大統領ですが、米国の労働者と労働組合にとってはどのような変化をもたらし、今後労働者要求が実現する可能性があるのでしょうか。バイデン新政権と労働者課題について紹介します。

 

〈労働者課題実現の条件はそろった〉

 

 政策実現には連邦議会の構成が重要な意味を持ちますが、今回下院は議席を減らしたものの引き続き民主党が多数に。上院も結果が出ずに再投票となっていたジョージア州民主党が取り返し、民主、共和の議席が50対50で同数に。カマラ・ハリス副大統領が上院議長を兼ねるために多数は民主党になりました。

 このことは労働者の要求を実現する上で可能性を拡大したことになり、労働運動の中からも強い期待の声があがっています。ホテル・レストラン労組(UNITE-HERE)のテイラー会長は「選挙運動が終わったから運動を止めることはしない。民主党に実行を迫らなければならない」と述べ、共和党が議会で多数だからという過去の言い訳は通用しないと釘を刺しています。

 

〈労働長官に組合出身者を指名〉

 

 自らを「労働組合のなかま」と呼んでいるバイデン大統領は連邦政府労働長官にマーティー・ウォルシュボストン市長を任命しました。ウォルシュ市長はもともとレイバラーという大工職人組合の出身で、ナショナルセンターのAFL-CIO(アメリカ労働総同盟・産業別組合会議)はこの人事に賛成しています。一方で進歩的な組合関係者は大統領候補予備選挙を争ったバーニー・サンダース上院議員を労働長官に求める声が強くありました(上院予算委員会の議長に就任)。それでもトランプ政権下の労働省が行ってきた、数々の反労働者的な政策、省令などが今後取り消されるのではないかと期待されています。この中にはオバマ政権下で進んだ残業代規制の強化(=ホワイトカラー・エグゼンプションの縮小)を取り消した、トランプ政権下の一連の省令の取り消しも含まれます。

 また集団的労使関係の問題や労使関係法の解釈などで判断を下す全国労働関係委員会(NLRB)の人事では、バイデン大統領は就任早々ピーター・ロブNLRB議長に辞職を勧告し、事実上更迭しました。トランプ前大統領が指名し、組合関係者から「ユニオンバスター=組合つぶし」と呼ばれていたロブ会長の下、持ち株会社としてもマクドナルドの使用者性を認めない判断など、この間NLRBは使用者寄りの判断を繰り返してきました。現在NLRBの委員には一つ空席があり、8月にもう一つ空席が出ることがわかっており、使用者寄りではない委員をバイデン大統領が指名することにも期待が高まっています。

 

〈連邦最賃時給15ドルへの道〉

 

 バイデン大統領の1兆9000億ドルの「コロナ対策政策パッケージ」の中には、連邦最低賃金を時給15ドルに引き上げるプランが含まれています。これは特にSEIU(国際サービス従業員労組)などサービス業を中心とした「時給15ドルへのたたかい」の運動がこの間前進してきたことの反映でもあります。

 「週40時間働いている人が貧困であってはならない。時給15ドル以下では、週40時間以上働いても貧困から抜け出せない」とバイデン大統領自身が演説し、現在7.25ドルしかない連邦最低賃金の引き上げの意義を強調しています。従来から最低賃金引き上げに抵抗してきた共和党から連邦議会で多数を奪還したことで、実現の展望は広がっているという見方が強くなっています。特に昨年11月の大統領選挙と同時に行われた州民投票で、フロリダ州ではバイデン候補がトランプ前大統領に票数で負けていますが、州の最賃時給15ドルへの引き上げは多数の支持で承認されました。最賃時給15ドルが共和党支持層の米国民も含めて支持を得ていることの証左でもあります。

 フロリダ州が最賃時給15ドルに移行することで、全米の約40%の労働者が時給15ドルの州、群、市などで働いていることになります。

 このような状況もあり、バイデン大統領は連邦最賃引き上げを重視しています。前回の引き上げは2009年の時給7.25ドルへの引き上げでした。2019年には議会下院で2025年までに時給15ドルへの最賃引き上げが可決していますが、共和党多数の上院では同法案は審議されてきませんでした。前述のように50対50という僅差の議席構成の上院では、最賃引き上げの連邦法改正には10人以上の共和党議員の賛成が必要です。単純な賛成多数では予算調整が必要で、時間がかかってしまいます。

 

〈時給15ドルへの期待と運動〉

 

 米国の最低賃金は1912年にマサチューセッツ州が女性と児童労働者の差別を防ぐ目的で決めたのが始まりで、その後主に北東部の13の州が次々と州最低賃金を制定します。連邦レベルでは1938年にルーズベルト大統領の時代に公正労働基準法が定められ、その中に連邦最賃が初めて時給25セントと決められました。

 最低賃金の経済効果について米国では、1970年代まで研究が進んでいませんでした。80年代に最低賃金は経済に悪影響があるという言説が広まります。しかし1992年に東部のニュージャージー州最低賃金が時給4.25ドルから5.05ドルに引き上げた際、同州とその隣の州のファストフード労働者の雇用状況を比較し「雇用への否定的影響はない」と結論付ける研究が出されます。それを契機に雇用や賃金に関する調査が進みますが、論争も続きます。しかし今では段階的な引き上げが経済の及ぼす否定的影響は小さいと多くの研究は示しています。

 米国では州や連邦の議会構成に応じてある意味「政治的力関係」で最低賃金が決められてきました。前回の09年の連邦最賃引き上げはブッシュ(息子)政権の時で、物価上昇に最賃が追い付いていないことを理由にした引き上げでした。今年1月1日には、全米で52の州、群、市などで最賃が引き上げられ、今年中に23の自治体で引き上げが見込まれます。パンデミック下でこそ最賃を引き上げるべきという世論を、貧困や人種差別に取り組む運動とともに労働組合がどれだけ後押しできるかが、最賃引き上げのカギになると思います。

 

 (月刊全労連2021年3月号掲載)

 

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はじめまして。月刊全労連・編集部と申します。

 

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 みなさん、はじめまして。私たちは月刊全労連・編集部です。と突然いわれても、多くの人にとっては「?」かもしれません。そもそも全労連とはなにか?を簡単に説明したいと思います。

 

 全労(全国労働組合総連合)は、日本の労働組合の全国的・全産業的な中央組織です。各産業別の労働組合(産別・単産)と、都道府県別の労働組合(地方組織)で構成されています。産業別の労働組合は、例えば医療なら医療、介護なら介護など、同じ業種で働く人たちを組合員として組織しています。なぜそうするかといえば、同じ業種であれば、共通の問題や課題を抱えているので、それらを取りまとめて改善を要求しやすくなるからです。同様に都道府県別の労働組合は、同じ地域の問題や課題に取り組みやすいというメリットがあります。

 

 月刊全労連は、そうした各労働組合の取り組みや、世界各国の労働組合のネットワークを通じて得た世界の労働組合のニュースなどを掲載している月刊誌です。読者層は主に、全労連に加盟している労働組合の組合員のみなさんなのですが、そこだけに留めておくのはもったいないような記事も多数掲載しています。そこでこのブログでは、そうした記事をいくつか一般公開していこうと考えています。いろんな方に読んでいただけると嬉しいです。どうぞよろしくお願い致します。

 

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